Sustainable development goals

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事例紹介・グッドプラクティス(国内編)

記事提供:環境ビジネス

前回までSDGs経営の必要性とSDGsの主流化の動きを見てきました。このなかで、国内企業を中心にSDGsコミュニケーションのグッドプラクティスに適宜触れてきましたが、今回は、政府のジャパンSDGsアワードの受賞企業からヒントを探りたいと思います。

1、注目される「ジャパンSDGsアワード」とは?

企業・団体などによるSDGs達成に向けた活動は、政府が優れた取り組みをトップランナーとして表彰する「ジャパンSDGsアワード」により、ますます加速していくだろう。

このアワードはSDGs推進本部で決定されるが、2017年度、2018年度と2回実施された ※1。

表彰の仕組みは「ジャパンSDGsアワード」実施要領(17年9月15日SDGs推進本部幹事会決定など)で決まっている。

外務省ホームページで案件の募集を行い、自薦に限るとされている。9月頃募集され、12月に受賞者が決定される。

SDGs推進円卓会議の委員らで構成する選考委員会が、受賞者を選ぶ(選考委員会の庶務は、外務省地球規模課題総括課において処理する)。

受賞者には、その功績の程度により、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)表彰が1件、SDGs推進副本部長(内閣官房長官及び外務大臣)表彰が4件程度、その他、特筆すべき功績があったと認められる企業・団体などに特別賞が贈られる。

応募用紙などはインターネット上で入手でき、表彰基準等も公開されている。

2、好事例紹介 受賞企業は本業と強みを活かしている

受賞事例からSDGs経営を見てみよう。アクションプラン発表と同時に、政府は、ジャパンSDGsアワードの表彰を2017年に12団体、2018年に15団体を発表した。これら受賞事例のうち企業事例がSDGs経営のベンチマークとなる。

(1)海外展開事例:外務大臣賞

第1回外務大臣賞のサラヤ株式会社は途上国で手洗いを促進する衛生向上、住友化学株式会社は「オリセット®ネット」事業によりアフリカでのマラリア感染防止を主軸としている。また、第2回外務大臣賞の株式会社LIXILは安価で高品質なトイレを途上国に提供、会宝産業株式会社は自動車リサイクルのグローバル・パートナーシップを形成している。

第1回の受賞事例を詳しく見ておこう。

1、サラヤ

  • ウガンダとカンボジアで、市民と医療施設の2方向から、手洗いを基本とする衛生の向上のための取り組みを推進
  • 「100万人の手洗いプロジェクト」として、商品の出荷額1%をユニセフに寄付し、ウガンダの手洗い普及活動を支援。また、ウガンダに現地法人「サラヤ・イーストアフリカ」を設立し、現地生産の消毒剤やその使用方法を含めた衛生マニュアルを提供している
  • 持続可能なパーム油類(RSPO認証油)の使用や、アブラヤシ生産地の生物多様性保全に取り組むと同時に、消費者へのエシカル消費の啓発を実施

2、住友化学

  • MDGsから継続してマラリア対策に取り組んできた経験を踏まえ、SDGsの達成に向けて、全事業を通じて全社員で取り組む考え
  • 2016年から開始した「SSS(Sumika Sustainable Solutions)」では、売上高を達成目標として掲げ、主に環境面からSDGsに貢献する製品・技術(2017年度時点で34製品・技術)を認定し、その開発・普及を推進。同じく「サステナブルツリー」では、「SSS」と連携しつつ、社員のための専用ウェブを通じて、SDGsの正しい理解と主体的な取り組みを促進している
  • 「オリセット®ネット」事業を通じて、感染症対策のみならず、雇用、教育、ジェンダーなどの幅広い分野で、経済・社会・環境の統合的向上に貢献

この受賞2社は本業を通じたSDGsへの貢献に取り組んでおり、海外進出はもちろん国内事業にも応用できるものとして、ベンチマークにできる好事例であると考えられる。

類似の途上国への本業活用の取り組みは、他にもパナソニック社のソーラー ランタン10万台プロジェクトなどさまざまに展開されている。

(2)国内事例

国内を主とする活動では、第2回内閣総理大臣賞受賞の株式会社日本フードエコロジーセンターがあげられている。食品廃棄物を有効活用するリキッド発酵飼料を産学官連携で開発し、廃棄物処理業と飼料製造業の2つの側面を持つ新たなビジネスモデルを実現している。

第1回パートナーシップ特別賞の吉本興業株式会社は、芸人タレントとエンタメでSDGsをわかりやすく啓発しSDGs認知度向上に寄与した。自社の持てる強みを活かした事例である。

同じく同賞の株式会社伊藤園は「伊藤園グループSDGs推進基本方針」を定め世界のティーカンパニーを目指して、「茶畑から茶殻まで」の一貫した生産体制を構築。茶産地育成事業や茶殻リサイクルなどでSDGsの目標12「持続可能な生産と消費」などに貢献している。バリューチェーン全体にSDGsを紐付ける上で参考になる。

そして、第2回では特別賞に株式会社虎屋本舗、株式会社大川印刷、株式会社滋賀銀行、株式会社ヤクルト本社、株式会社フジテレビジョンが入賞し、中小企業や金融機関、メディア企業にも広がった。

3、受賞企業から得られるヒントとは?

今後のSDGs推進で重要なポイントは、本アワードの評価基準である。

  1. 他にも応用が利く普遍性
  2. すべての人を取り残さない包摂性
  3. 関係者を結集する参画型
  4. 経済・環境・社会の3要素を含める統合性
  5. 透明性と説明責任

これは国連のSDGsの原則と符合している。第1回特別賞の伊藤園の分析がわかりやすいので次に示しておく。

4、非財務価値の見える化とは? 「発信型・開示型三方よし」の実践

企業戦略の全体のストーリーを示すうえで個性を際立たせるポイントが、非財務価値である。ブランド力、人材、組織風土、ネットワーク力といった財務諸表には出ない他社との差別化要素をできるだけ見える化し、財務データと結び付けて発信していくことが重要である。これにより、価値創造につながるビジネスモデルが伝わる。その際、社会課題との関連性についてのグローバルな発信に役立つのが、世界の共通言語であるSDGsだ。

今後、次の3点を要素とする「SDGs経営」が重要である。

  • 協働のプラットフォームとして持続可能性の共通言語SDGsを使う=「協」
  • SDGsによりリスク管理を強化しつつ新たな共有価値の創造を目指す=「創」
  • そして、SDGsの世界への強い発信性を生かすとともに的確なESG情報開示を行うことで、持続的な企業価値の向上と投資を呼び込む力をつける=「力」

SDGs経営では、この3点から協働で新たな価値を生む「協創力」を発揮することがポイントである。そして、本稿で提唱している「発信型・開示型三方よし」によるグローバル競争戦略で「SDGs経営先進企業」を目指すべきである ※2。

※1 ジャパンSDGsアワードの詳細

※2 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし

連載

  1. SDGsをどう理解するか 第1回(CSR・CSVとの整理)
  2. SDGsをどう理解するか第2回(ESG投資との整理)
  3. SDGsをどう理解するか 第3回(SDGsの概要と特色)
  4. SDGsをどう理解するか 第4回(パリ協定・脱炭素との整理)
  5. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第1回(取引先/サプライチェーン)
  6. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第2回(投資家/金融機関)
  7. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第3回(社内/インナー)
  8. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第4回 (採用)
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

社会情報大学院大学客員教授
株式会社伊藤園 元取締役

東京大学法学部卒、1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、取締役、常務執行役員CSR推進部長等を経て2019年4月末退職。2019年4月より社会情報大学院大学客員教授。 主な著書に、『CSR新時代の競争戦略 ― ISO26000活用術 ― 』(日本評論社、2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社、2015年)『経営に生かすSDGs講座─持続可能な経営のために─』(環境新聞ブックレットシリーズ14)新書(環境新聞社・2018年)、共著『SDGsの基礎』(事業構想大学院大学出版部、2018年)など。

現在、日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事、学校法人千葉学園評議員、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員(平成26年度より)を兼任。通訳案内士資格保有(仏語・英語)。

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