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ESG投資の強化を鮮明に打ち出す日本取引所グループ

記事提供:環境ビジネス

日本取引所グループ 総合企画部・企画統括役 松尾 琢己 氏

2018年7月1日、日本取引所グループ(JPX)は、サステナビリティ推進本部を設置した。世界ではSDGsへの関心が高まり、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の重要性が高まっている。こうした動きを受け、JPXではCEO直轄の部隊として全社横断的な組織を設置。ESG投資の普及やサステナブルな社会を目指し、取り組みを強化している。

ESGへの取り組みを対外的に発信

JPXは2018年4月27日に第二次中期経営計画(2016~2018年度)のアップデートを発表した。その重点的な取り組みの1つに『ESG投資の普及に関する取り組みの強化』を掲げている。7月1日には、CEO直轄組織としてサステナビリティ推進本部を立ち上げ、ESGやサステナビリティに関する取り組みを、経営ベースで積極的に進めていく姿勢を示している。

東京証券取引所グループと大阪証券取引所が2013年1月に統合し誕生したJPX。ESGに関する取り組みはこれまでも行ってきたが、そうした取り組みをまとめて発信する主体がなかった。JPX総合企画部・企画統括役の松尾琢己氏は「サステナブル推進本部を設置した狙いの1つは、専門部署をつくることで、以前から行ってきた取り組みを、ESGの視点で対外的に発信することにあります。顔の見える部隊をつくることで、JPXとしての取り組みをわかりやすく発信していきます」と話す。

サステナビリティ推進本部では、『上場会社のESGの取り組み支援』と『ESG関連商品の提供』を大きな2つの柱としている。

ESGの取り組み支援においては、特にコーポレートガバナンスの充実について、既に20年弱にわたり東証が進めてきたもの。2014年に閣議決定された『日本再興戦略』で成長戦略の一貫として、コーポレートガバナンスの強化が掲げられたのを機に、JPXでは2015年に『コーポレートガバナンス・コード』を策定。そのなかで上場会社がESG情報を含む非財務情報の提供に主体的に取り組むことを推奨している。

「コーポレートガバナンスを現代的に考えると、ESG、サステナビリティの話は不可避です。コーポレートガバナンス・コードのなかでは、非財務情報の開示とともに、環境や社会問題に対し取締役会で経営として考えてほしいといった内容を盛り込んでいます。また、コーポレート・ガバナンスに関する報告書のなかでも、環境保全活動、CSR活動の状況、役員の女性登用率などについて、強制ではなく、例示するかたちでの開示を進めています」(松尾氏)。

上場会社の ESG 関連の取り組み支援

  • 「コーポレートガバナンス・コード」において、上場会社がESG情報を含む非財務情報の提供に 主体的に取り組むことを推奨。この他株主以外のステークホルダーとの適切な協働(その中で の社会・環境問題などの課題への対応)を勧めている。
  • 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」において、上場会社は環境保全活動、CSR活動な どの実施状況、役員への女性の登用に関する状況を開示している。
  • 経済産業省と共同して、なでしこ銘柄(2012年度~)、健康経営銘柄(2015年度~)として、 優れた取り組みを行う上場会社を年1回選定・周知している。

投資家への ESG 関連商品の提供

株価指数 ガバナンスに焦点を当てたJPX日経インデックス400やJPX中小型株指数の他、設備投資・人材投資・環境・ESG全般を考慮した株価指数を算出、公表(10 指数)
ETF JPX日経インデックス400やJPX中小型株指数に連動するETF8(指数連動型上場投資信託)銘柄、ESG関連指数に連動するETF11銘柄
インフラファンド 再生可能エネルギー発電設備を投資対象とするインフラファンド4銘柄が上場
プロボンド グリーンボンド・ソーシャルボンドの情報開示を任意におこなうため開示プラットフォームを2018年1月22日に開設

『何を開示するか』が重要

サステナビリティ、ESG投資といった動きに先進的なEUでは、昨年、非財務情報の開示についてのガイドラインをつくるなど、制度的な義務づけを具体化していく動きが出ている。

米国、日本は今のところ自主的な開示にゆだねているが「何を開示してもらうかは、非財務情報の場合、非常に難しい」と松尾氏。ESGの開示で肝要となる、何が重要課題(マテリアリティ)にあたるのかは、各企業によって全く異なる。

非財務情報で何を開示するかは、業種やビジネスモデルによって変わる。各社が自身でマテリアリティを特定し、将来的なリスクとビジネスの可能性を書くのが本筋で、取引所が開示内容を一律に決めることは困難だ。

上場会社にとって、非財務情報の重要性について異論はない。環境や社会問題の要素が中長期的な企業価値においてリスクであり、イノベーションの源にもなり得るという総論においても異論はないだろう。それらを投資家に評価してもらうには、情報の開示が不可欠だ。

「非財務情報の開示に関しては、上場会社が自主的に開示するのをサポートするのが、サステナビリティ推進本部の役割だと考えています」(松尾氏)。

一方で、投資家の視点に目を向けることも重要だ。ESGの話では上場会社の取り組みに光が当たりがちだが、それを、反対側にいる投資家がどう受け止めているのか。サステナビリティ推進本部では、投資家と企業の建設的な対話の場を創出することで、より深いエンゲージメントをつくり出していく。

「サステナビリティ推進本部は全社横断的な組織として、国内外の諸機関、投資家、上場会社、市場関係者をはじめとするステークホルダーと連携しながら、ESG投資の普及に努めていきます」(松尾氏)。

海外諸機関との連携にも注力

JPXは2017年12月、Sustainable Stock Exchanges(SSE)イニシアティブに加盟している。SSEは、2009年に国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連グローバル・コンパクト、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)、責任投資原則(PRI)により創設された取引所のためのイニシアティブ。

「海外の諸機関と連携し、国内外の動向を調査し、新たな案件を発掘していくのも、サステナビリティ推進本部の1つの大きなミッションだと考えています」(松尾氏)。

また、経済産業省と『なでしこ銘柄』(2012年度~)、健康経営銘柄(2015年度~)として、優れた取り組みを行う上場会社を年1回選定し、周知している。

「点数が良ければいいということではなく、業種が違えば見るポイントもスコアリングのポイントも違いますので、セクターごとに頑張っている上場会社に光をあてているのも特徴です」(松尾氏)。

投資家に対するESG関連商品の提供では、ガバナンスに焦点をあてたJPX日経インデックス400のほか、設備投資、人材投資、環境、ESG全般を考慮した株価指数を算出、公表。ETFでは、ESG関連指数に連動するETF11銘柄が上場。インフラファンドでも、再生可能エネルギー発電設備を対象とする4銘柄が上場している。また、グリーンボンド・ソーシャルボンドの情報開示を任意に行うための開示プラットフォームを2018年1月に開設した。

今後は、2019年度からの新しい中期経営計画をつくるなかで、ESG関連の取り組みの柱を盛り込んでいく。

「まずは、顔の見える部隊を立ち上げ、情報収集や発信、関係者との対話の中で新しいアイデアや案件の発掘をしていきたいと考えています」(松尾氏)。

記事の公開期限:2019年06月28日

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