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サラヤに創業以来70年脈々と貫かれるSDGs精神

記事提供:環境ビジネス

第1回ジャパンSDGsアワード表彰式

『いのちをつなぐ』をスローガンに、手指消毒剤や『ヤシノミ洗剤』など、世界の衛生、環境、健康に貢献する商品を生み出してきたサラヤ。いち早くSDGsに取り組み、第1回『ジャパンSDGsアワード』において、『SDGs推進副本部長(外務大臣)表彰』を受章した。サラヤのソーシャルビジネスへの挑戦の歴史を紐解く。

SDGsへいち早くコミットメント

第1回『ジャパンSDGsアワード』で『SDGs推進副本部長(外務大臣)表彰』を受章したサラヤ。『ジャパンSDGsアワード』は、全国務大臣を構成員とするSDGs推進本部が、国連の『持続可能な開発目標(SDGs)』達成に資する優れた取り組みを行う企業・団体などを表彰する制度。2017年12月26日に首相官邸にて表彰式が行われた。

2015年に、国連に加盟する193カ国が全会一致で採択されたSDGs。2030年までに『誰ひとり取り残すことなく』持続可能な開発を進めようという計画だ。サラヤの代表取締役・更家悠介氏は、『サラヤでは世界各地域の経済力の向上に資するプロジェクト、衛生向上や生物多様性の保全に向け、各事業をSDGsと関連づけ、具体的に行動をします』と、企業としてSDGs達成に積極的に取り組む姿勢を、いち早くトップコミットメントとして発信している。

SDGsアワードで評価された取り組みの1つが、アフリカ・ウガンダで展開する『100万人の手洗いプロジェクト』。

サラヤの創業は1952年。当時、戦後間もない日本では、赤痢などの伝染病が多発していた。そうした社会問題を解決すべく、日本で初めて薬用手洗い石けん液と石けん液容器を開発、事業化。サラヤの液体石けんは、学校や工場で広く使われ、多くの人の感染予防に貢献。以来、アルコール手指消毒剤や、手をかざすとセンサーが反応し自動で薬液を吐出するタッチフリー型ディスペンサーの開発など、日本の衛生環境の向上を牽引してきた。

一方で、開発途上国に目を向けると、現在、世界で1日約16,000人もの5歳未満の子どもが命を失っている。その原因の多くは予防可能で、石けんを使って正しく手を洗うことで、下痢性疾患や肺炎を予防し100万人の子どもたちの命を守ることができるといわれている。

そこで、サラヤが2010年にスタートしたのが『100万人の手洗いプロジェクト』だ。対象となる衛生製品の売上の1%を寄付し、アフリカ・ウガンダで展開するユニセフ手洗い促進活動を支援する。2010年~2015年までの6年間で、活動は大きな成果を上げたが、ウガンダの衛生環境はまだまだ厳しい状況にある。2015年までのミレニアム開発目標(MDGs)に続き、2016年からは国連で採択された新たな目標SDGsの達成に向け、さらに3年間、支援を継続するという。

支援からソーシャルビジネスへ

更家氏は、「ビジネスとして環境問題や社会問題に対応できればいいという発想が常にあります」と話す。

ウガンダで『100万人の手洗いプロジェクト』を続けるなか、サラヤでは、医療機関の衛生環境の改善にも目を向けた。病院内での病気の感染を防げば、乳幼児死亡率や妊産婦死亡率をもっと下げることができるからだ。2011年に現地法人『SARAYA EAST AFRICA』を設立。アルコール手指消毒剤を現地生産し、医療従事者に普及させていくことを目指すソーシャルビジネスを開始した。

この取り組みは、2011年にJICA(国際協力機構)の『新式アルコール消毒剤による感染予防を目的としたBOPビジネス事業準備調査(BOPビジネス連系促進)』として採択され、2012年5月~2013年4月にはパイロット・プロジェクトとして、ゴンベ県病院とエンテベ県病院でアルコール手指消毒剤『ヒビスコールSH』が試験導入された。その結果、手指消毒のコンプライアンス率が70%まで上がった時点で、小児科の子ども達の下痢性疾患や帝王切開後の敗血症がほとんどなくなるという結果を得た。

サラヤとJICA/ゴンベ県病院

サラヤとJICA/ゴンベ県病院

(サラヤ提供)

(サラヤ提供)

こうした成果をもとに、2014年9月には、アルコール手指消毒剤を普及させることで、ウガンダおよび東アフリカ地域での感染症拡大を防ぐ取り組みで、『ビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)』への参加承認も得ている。

『ビジネス行動要請(BCtA)』とは、国連開発計画(UNDP)などの開発機関と政府の主導により、長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルを模索し促進する取り組みだ。参加企業には、SDGsの達成を支援するための世界を代表する企業などが集まる枠組みへの参加、専門的なサポート、開発関係機関とのパートナーシップの構築、世界的な場での自社の取り組み成果の検証と発表の機会などが提供される。

「MDGsからSDGsになり、企業の参加できる幅は、より広がったと感じます。これは、日本企業にとっては大きなチャンスであり、チャンスを前向きに捉えて活用しようという態度が必要です。」(更家氏)

商品のバックヤードを考える

「日本が高度経済成長期にあった60年代、社会的には経済合理性の方が優位にありました。ただ、悪い環境を望む人は誰もいないので、経済合理性のなかでも、その時の社会課題や環境に配慮した商品を開発し、その意味を表現できれば、お客様に商品を選んでいただけます」(更家氏)。

赤痢予防の薬用石けん開発に端を発するサラヤの歴史。1961年には、大気汚染が日本各地で発生するなか、多人数がうがいできる『コロロ自動うがい器』を発売し、1971年には、石油系合成洗剤による河川の汚染が進み、洗剤が社会問題になるなか、業界に先駆けて地球にも手にも優しい植物由来の『ヤシノミ洗剤』を開発した。

一方で、サラヤでは、2004年から、ボルネオ島(マレーシア)のサバ州で生物多様性の保護と、持続可能なパーム油の活用にも取り組んでいる。

『ヤシノミ洗剤』は、石油系洗剤による水質汚染が社会問題となるなか、環境に優しい植物系洗剤の先駆けとして誕生したサラヤの主力商品だ。しかし、世界の食用需要の増加などで植物系原料のひとつであるパーム油の生産が拡大。パーム油が採れるボルネオ島では、プランテーションの開発が急速に進み、森が失われ、野生動物の数が減少していたのだ。

プランテーションの拡大

プランテーションの拡大

プランテーションの広がり

プランテーションの広がり

サラヤがサバ州での生物多様性保全をはじめたのは、2004年、テレビ取材で更家氏が番組インタビューを受けたことがきっかけだったという。

「開発当時は顧客の方ばかりを見て、バックヤードで起こっている問題に気づかずにいました」(更家氏)。

現地供給の問題に気づいたサラヤでは、2005年1月にRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に正式に入会。また、現地の国際協力機構JICA(日本政府ODA)やSWD(サバ野生生物局)などと協力し、2006年12月にボルネオ現地にBCT(ボルネオ保全トラスト)事務局を設立した。土地を買い戻し、分断された緑(保護地)をつなぐことで、『緑の回廊』を回復させる計画を、BCTを通じて行っている。

「ビジネスだけでやっていてもダメだと痛感しました。環境や社会問題を考えなければ、何らかの形で結局自分に返ってきます。人間も複雑だし、社会も複雑なので、『これが良い、悪い』ではなく、もう少し深めていくといろいろなものが見えてくるのではないかなと思います」(更家氏)。

できることからスタートする

2022年に創業70周年を迎えるサラヤ。2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博などを見据え、グローバル化に力を入れる。現在、海外には営業24拠点、製造7拠点を構え、世界の衛生ニーズに対応している。

「2010年に手洗いプロジェクトからスタートしたアフリカでは、2025年くらいまでにビジネスを確立したい」と語る更家氏。

その1つとして、農林水産省の『平成30年度アフリカ等のフードバリューチェーン課題解決型市場開拓事業』の採択を受け、東アフリカ地域における食品衛生事業への取り組みを開始している。現状、東アフリカではコールドチェーンが未発達で、収穫から消費までの間に発生する食品ロスが大きな問題となっている。

「ケニアからウガンダまでのコールドチェーンを作ろうというのが、事業の目的です」(更家氏)。

サラヤ 代表取締役 更家 悠介 氏

サラヤ 代表取締役 更家 悠介 氏

同プロジェクトは、2つの日系企業『KAI GLOBAL Limited』(本社:ケニア/ナイロビ市)および『COTSCOTS LTD.』(本社:ウガンダ/カンパラ市)との協働で実施される。まず、『KAI GLOBAL Limited』と連携し、物流状況についての調査を行い、ケニアの漁港で入手した海産物を用いてナイロビ・カンパラ両市への輸送テストを行う。輸送した海産物は『COTS COTSLTD.』の経営する日本料理店『やま仙』で加工・提供する。

また、サラヤは、食品や器具への除菌効果の高い微酸性電解水を生成する『微酸性電解水生成装置(サニスター)』やエタノールを用いた急速冷凍装置『ラピッドフリーザー』などの衛生加工機器を導入し、安全かつ高品質な食品を提供するためのサポートを行うという。

アフリカ市場は今後、人口や所得も増加することが予想され、日本料理の需要も伸びることが期待される。サラヤでは、東アフリカで、医療衛生に続き、食品衛生事業にも力を入れていく方針だ。

「SDGsを『やらねばいけない』ではなく、SDGsで『なにかビジネスはないか』と前向きに発想転換することが重要です。社会の変化を知り、ポジティブシンキングで変化をチャンスとして捉えること。そこに成功のカギがあると思います」(更家氏)。

更家氏の著書に『これからのビジネスは「きれいごと」の実践でうまくいく-環境ブランドで日本一になったサラヤの経営』(東洋経済新報社)がある。

「企業はある程度収益がなければ発展できませんので、『きれいごと』ばかりでもないでしょうが、できることから始めなければ何もスタートしません。まずは、その『きれいごと』を経営理念や社の方針に明確にいれていただくことが必要かと思います」(更家氏)。

記事の公開期限:2019年07月11日

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