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自治体×企業連携の先進事例から学ぶ、地域創生SDGs

記事提供:環境ビジネス

離島自治体として唯一「自治体SDGsモデル事業」に選定された、長崎県の壱岐市。同市のモデル事業で存在感を示すのが富士ゼロックスだ。ビジネスの視点で見るSDGsと地域創生のあり方を、同社SWI S&S営業部 地域創生営業部の高柳聡彦氏、高下徳広氏に伺った。

地域から問われる「なぜ、複写機の富士ゼロックスが地域創生?」

富士ゼロックス株式会社
SWI S&S営業部
地域創生営業部部長 高柳 聡彦氏

SDGsの推進役である「国連グローバル・コンパクト」の運営に携わるなど、CSRやSDGsに関する取り組みで先進的な企業として知られる富士ゼロックスは、東日本大震災支援を機に自治体との連携を開始。独自のコミュニケーション技術・IT技術を活用し、地域課題の解決を積極的に行ってきた。

壱岐市との「自治体SDGsモデル」は、この活動を知った同市からの働きかけをきっかけにスタートしている。具体的には、2015年10月に「地域創生連携協定」を締結し、高下氏が同市市役所に駐在。地域課題の解決に取り組むこととなったのだ。これは、当時新たなマーケティング指標を模索していた同社の九州地方の販売戦略として大きな意義があった。九州地区は、人口減少により衰退した地域の活性化が特に大きな課題となっており、今後提供すべきソリューション・サービスのあり方と、前提となる地域の潜在的なニーズを探る必要があったのだ。

「自治体SDGs」を強力に支援する同社だが、「地域に入っていく際、必ず『複写機の富士ゼロックスが地域の創生に取り組む理由』を質問される」(高柳氏)という。同社の事業は複写機サービスからスタートしているが、創業当時から情報の伝達・共有を手助けすることを掲げてビジネスを展開。その理念の下、コミュニケーション技術を研鑽し、現在はそれを用いた地域課題の解決に取り組んでいる。つまり、今回の流れは必然であるともいえるのだ。

対話会で浮き彫りになる「地域課題」

地域に深くコミットし、ソリューションを提供する同社だが、背景には地域の衰退は企業の存続にもかかわるとの危機感がある。

複合機の製造だけでなく販売からメンテナンスまで手がける同社は、全国に31の販売会社を持つ。「販売会社で働く人の多くがその地域に住む方々」(高柳氏)であり、企業の規模からいっても販売会社は地域の中堅・中小企業のひとつ。つまり、地域課題の解決は『自分ごと』であるのだ。

この事業の特徴が「徹底した地域課題の深堀り」。柱となるのは、同社の「共創型コミュニケーション技術」を活用した「対話会」だ。住民共通の思い出話から各々の思いを引き出すこの「対話会」からは多くの課題が出てきた。なかでも大きいのが、「一次産業の復興」だ。

壱岐は穀倉地帯として栄えた歴史を持つ。「その強みを取り戻すこと」が住民の思いとして吸い上げられ、「農業のスマート化と6次産業化」がこの事業の柱のひとつに据えられた。

その課題の解決をバックアップするのが、オプティム社。この協業は、富士ゼロックス社の持つ企業ネットワークを活用してコーディネートされたものだ。

地域創生はともすると「協賛する企業ありき」で進みがち。しかし高下氏は、「あくまで『住民との対話を通じた地域課題の解決』からぶれてはいけない」とそのポイントを語る。

この協業も、住民の声を起点とした地域課題が先にあり実現したが、この住民からの声を起点に課題を解決できるのは、同社の持つ「ネットワークの広さ」があるためだ。先述のように、日本全国に幅広い顧客ネットワークを持つ同社は、自社で解決できなくともソリューションを持つ企業を必ず見つけられるという強みを持っているのだ。

地域でのSDGs推進に不可欠、着火剤としての首長の存在

同社の取り組みは、規模の大小にかかわらず、多くの企業にとって示唆に富んだものだといえる。それは、地域住民、すなわち顧客ニーズの徹底した吸い上げこそが、新たなビジネスを生み出すということだ。

対話会とコーディネート力を活かした同社の取り組みは全国から注目され、壱岐市は2018年に、SDGsの先進的な取り組みモデルとなる「SDGs未来都市」にも選定された。この原動力のひとつが同社であるのは間違いないが、高下氏は「壱岐市長のイニシアチブが非常に大きい。そもそも、壱岐市の活動の始まりは、私たちの活動を知った市長から、お声かけいただいたことがきっかけ」と述べる。自治体SDGsには、着火剤となるような地域首長の強い思いと行動が欠かせないのだ。

モデル選定で生じた地域の変化

同事業が「SDGsのモデル」となったのは必然ともいえる。しかし、「私たちとしては、事業として循環型社会の形成を行い、それが結果的にSDGsにつながった」(高柳氏)と、あくまで本質は変わらないとの姿勢をみせる。

一方で、SDGsを標榜したことでよい変化も生じた。そのひとつが、拠り所・旗印としての役割。「取り組みが、国や世界の流れとつながっていること」「その活動には、地域と企業がともに貢献しなければならない」との認識は、事業の方向性を示しステークホルダーのベクトルを揃えることに役立つ。また、2030年という長い目標設定は、高校生をはじめ、多くの人を巻き込む新たなきっかけともなっているという。

島内の高校生、東京大学の学生や留学生などが参加した「イノベーションサマープログラム」発表会の様子

新しい地域創生に向けて

富士ゼロックス株式会社
SWI S&S営業部
地域創生営業部部長 高柳 聡彦氏

「地域の方からは、観光インバウンドなど『外向けの地域創生』は、難しくなりつつあるとの声を聞くことが増えてきた」(高柳氏)という。そうしたなか、同社が取り組む「地元の声を起点にしたSDGs推進」による地域創生は、地域住民を巻き込む新しい取り組みとして、大きな可能性を秘めているといえるだろう。

一方、この取り組みは、企業の側にも大きなヒントがある。SDGsはともすると従来型のCSR活動で終わる可能性も否めない。しかし、SDGsの理念にもあるように、その推進に欠かせないのは、ステークホルダー間で共通価値を創造すること、すなわちCSVで、それをもとに収益事業として取り組むことが必要不可欠なのだ。

「地域の未来を創るのは、地域に住む人たちで、私たちはバックアップに徹する」(高下氏)と述べる。この事業は、企業が本来、社会に提供すべき価値の追求がCSVであり、SDGsにつながるという好例といえるだろう。

長年、CSR活動、すなわち企業の社会的責任に真摯に取り組んできた同社。同社の歩みからは、よいCSR活動は結果としてCSVをもたらすということがうかがえる。SDGsの根底に流れる理念でもあるが、企業が社会的責任を追求することが、新たな事業創出につながるのだ。

記事の公開期限:2019年11月10日

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