Sustainable development goals

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ベンチャー発信のSDGs、食とエネルギーの持続可能性

記事提供:環境ビジネス

藻類であるミドリムシに可能性を見出し、大学発ベンチャーとして初の上場を果たしたユーグレナ。ミドリムシのポテンシャルを活かし、食やエネルギーなどへの事業展開を進めている。そしてこのたびユーグレナは藻類として世界初のASC-MSC海藻(藻類)認証を取得。その思いを、代表取締役社長の出雲 充氏に伺った。

なぜユーグレナが国際認証を?

2012年のロンドンオリンピックのころから、食の持続可能性への国際的な意識が高まってきているのを出雲氏も感じていた。「持続可能なオリンピック」が掲げられ、会場や選手村で提供される食品には持続可能性に配慮した調達基準が設けられた。しかし、そのころは自分のビジネスでASC-MSC認証をとることは考えてはいなかったという。

そんな出雲氏が認証取得の決意を固めたのは、2017年にヨーロッパへ出張していたときのことだった。ロンドンで行われたASCとMSCの会合に参加し、事務局のメンバーから直接話を聞いたことで、出雲氏の心は一気に動いた。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも、水産物の調達基準としてASCやMSCの国際認証が挙げられています。これは、日本国内において国際基準の意識喚起になるのではないでしょうか」と話す出雲氏。さらに、「今後、日本人の魚や海に対する意識は劇的に変わるはずです。このタイミングを捉えられるかどうかは、かなり大きなインパクトがあると考えています」と続ける。

今回ユーグレナが世界初で取得したASC-MSC海藻(藻類)認証は、2018年に発効されたばかりの藻類のために策定された認証基準。認証を受けるにあたって、認証団体に求められる専門的な資料を提供したという。

【Key Word 解説】ASC認証・MSC認証
ともに水産物を対象とする国際認証であり、ASC認証は環境と社会に配慮した責任ある養殖方法で生産された水産物に対して、MSC認証は持続可能で環境に配慮した方法で獲られた水産物に対して与えられる。

世界の価値観は『持続可能』にシフト

「今と同じペースでいくと、子どもたちは寿司屋に今あるメニューのうち3分の1は食べられなくなってしまうかもしれません」と日本の漁業の持続性を危ぶむ出雲氏。昨年末に政府は70年ぶりに「漁業法等の一部を改正する等の法律」を公布した。現在14万人ほどいる漁業関連従事者は、高齢化と後継者不足により2050年までに半減すると予測されている。

一方で世界へ目を向けてみると、漁業は過去50年で約4倍に成長した成長産業である。漁師はノルウェーでは人気の高い職業で、所得は日本の漁師の3倍ほどだという。日本は排他的経済水域の広さは世界で6番目だが、有効活用できていないのが現状である。

「SDGsをノルウェーはよくわかっています。世界ではすでに持続可能性が重要な価値となっています」

SDGs的発想では『この海はどうしたら持続可能になるか』を科学的に計算することが基点になる。1年間の漁獲可能量から、個別漁獲割当をそれぞれの漁船に配分する。余った個別割当枠は売買することもできるが、年間漁獲高が決まっているため市場価格は大きく値崩れすることがない。

社会貢献は『発信』してこそ

出雲氏は、海外投資家から受けた質問をきっかけにグローバル社会に向けた広報の『作法』を痛感したという。

日本には謙虚を美徳とする文化があり、地域に貢献する健全な経営を行っていても、表立ってアピールすることは少ない。海外の文化では、『よいことなのにアピールしない』のは『何か後ろめたいことがあるのではないか』という誤解を受けやすいのだそうだ。そこで同社は、よい取り組みはプレスリリースで積極的に発信するようになった。

日本には昔から『三方良し』という考え方がありSDGsは『これまでもやってきたこと』と発信しない企業は多いが、これからの時代、それはもったいないことだと出雲氏はいう。人口が減少し国内市場の縮小が見込まれる日本にとって、海外市場は無視し難い存在だ。ASCやMSCなどの国際認証は、海外市場を視野に入れるとき大きな武器となる。

「もっと世界へという展望で、世界中の人がほしがるようなものをつくっていこうというならば、世界へ通じる発信が必要です。そうすれば、優秀な人材も集まってくるのではないでしょうか」と出雲氏。日本には世界に誇る水準のテクノロジーがある。

「環境技術やSDGsでも、世界中の人に日本のテクノロジーがキーだったと思ってもらいたい」

小さな成功の積み重ねが社会を変える

出雲 充氏
ユーグレナ 代表取締役社長

2002年東京大学農学部農業構造経営学専修卒業。同年東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。その後ミドリムシで世界の食料問題解決を志し、2005年8月ユーグレナを創業、代表取締役社長に就任し、現在に至る。政府関連の委員等を多数務めるほか、ベンチャー・経済人関連での受賞多数。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書)がある。

「ASC-MSC海藻(藻類)認証取得に留まらず、新しい枠組みに対しては小さい成功事例をどれだけつくれるかが大事だと考えています」という出雲氏。日本をバイオ燃料先進国にすることでSDGsゴール7や13への貢献を目指す取り組み『GREEN OIL JAPAN』を2018年11月に宣言したこともその思いの現れだ。この取り組みでは横浜市や千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、ひろしま自動車産学官連携推進会議といった多様なパートナーとの連携でプロジェクトを進めている。

政府やNGOなどといった大きな組織だけではなく「市民が自分とのつながりを感じるようなパートナーシップも大切にしたい」と語る出雲氏。地場の養殖関係・小売流通で働く意欲ある若者のなかには、SDGsに参画してくれる人も多いのだという。地域の交流促進や地域活性にもつなげていきたい構えだ。

「ベンチャー企業が小さい成功事例を早く、たくさんつくれば、それはひとつのムーブメントになります。そのベクトルが合ってくればひとつの大きな『うねり』になる。そうなると実は思ったよりも簡単に、社会全体が動いてくるのではないでしょうか」

小さな成功を積み重ねて新しい価値を創造し、社会を変える。ベンチャーだからこそできる、SDGsへのアプローチだ。

記事の公開期限:2020年04月12日

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