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『環境は産業』 紙の再生をテーマにした北九州市の新たな取り組みに迫る

記事提供:環境ビジネス

北九州市では、いのちのたび博物館、イノベーションギャラリー、そして環境ミュージアムの3館連携で、『印刷と紙』をテーマに企画展を開催した。『SDGs未来都市』としても知られる同市の取り組みについて話を聞いた。

公害克服の歴史を伝えるミュージアム

九州の最北端に位置する北九州市は、明治から戦前にかけて九州の玄関口として栄えた門司港を持つ旧・門司市や旧・小倉市などが1963年に合併して誕生した都市だ。北九州工業地帯として経済を牽引してきたが、それゆえに高度成長期には公害の都市として知られた時期もある。このような歴史を経てきたため、現在は環境問題の解決や環境産業に力を入れていることでも知られる。2018年度に内閣府の『SDGs未来都市』に選定され、同時に『自治体SDGsモデル事業』にも採択されている。

この公害という負の歴史とそれを克服した歴史、さらに、現在は環境先進都市として知られる同市が持つ、環境課題を解決する技術力などを学べるのが『北九州市環境ミュージアム』だ。

今から約20年前の2002年に正式にオープンし、環境に関するさまざまな展示やワークショップなどを手掛け続けている。「北九州市では約130の小学校で環境アクティブラーニングに取り組んでおり、環境ミュージアムは見学先のひとつとなっています」と話すのは、北九州市 環境局 総務政策部 環境学習課環境学習係長である小林幹利氏だ。「甚大な公害があった歴史を踏まえつつ、その流れを伝え、市民の環境力を高めるというコンセプトが環境ミュージアムにはあります」と話す。

北九州市環境ミュージアム 施設長 佐藤明史氏(左)
北九州市 環境局 総務政策部 環境学習課 環境学習係長 小林幹利氏(右)

「持ち込んだ紙から便せん」制作体験が好評

ここで、2019年10月末から約2カ月間開催されたのが、SDGs未来都市の実現に向けた新しい取り組みの第一弾となる『イノベーションで拓く持続可能な紙の未来』である。『いのちのたび博物館』と『北九州イノベーションギャラリー』そして環境ミュージアムという、市内の3つの博物館の連携の一環として実施された。

企画展では『イノベーションで拓く持続可能な紙の未来~みんなでつくる小さな紙の再生工場~』と題し、セイコーエプソンが開発した乾式オフィス製紙機『ペーパーラボ(PaperLab)』が展示された。PaperLabは、使用した紙を、水をほとんど使わず新しい紙に再生できる製紙機器。その大きさと水を使わない構造から、企業や自治体のオフィス内にも設置できる。

期間中、セイコーエプソンとPaperLabを導入する企業による、開発秘話や導入効果の詳細を紹介する講演会も開催された。また、企画展を説明付きで見ることができる『学芸員とめぐる東田地区秋の特別展ガイドツアー』や、強度の違う紙や色紙も再生できるPaperLabの特長を紹介するための、再生した紙を使った紙ヒコーキワークショップなど、北九州市内外の一般市民や子どもたちも対象とした催しも開催した。

「セイコーエプソンは、今年が北九州市にオフィスを置いて20周年で、地元に根付いた企業です。今回の“印刷”をテーマとした企画展でぜひ北九州市とコラボしたいと言って下さり、PaperLabの展示と紙の再生の実演などにつながりました」と小林氏。企画展では、市民にも不要な紙を持って訪れることを呼びかけ、PaperLabを使って紙を再生し、便せんやペーパークラフト、名刺などを作る体験も行われた。

ミュージアムは、アクティブラーニングを推進する市内小学校の見学先のひとつにもなっている

「環境を学びたいなら北九州市へ」海外からの来館者も増加中

環境ミュージアムの施設長である佐藤明史氏は、「公害克服をテーマにした博物館は珍しいと思います。2回、3回と訪れてもらうために、小さくても企画展のような催しを手掛け、リピーターを増やしていきたいと考えています」。そのひとつが、今回の企画展だと話す。近年は外国からの来館者も増加。「北九州市の代表的な産業は、“環境”なのです。海外からの来館者の増加を見ても、北九州に来たなら環境を学んでいこうという意識が広まってきているあらわれだと思います」。

「博物館の役割のひとつは行動変容」だと佐藤氏。「特に子どもたちには、ここで学んだことを家に帰ってから実行してもらいたいと思っています。ここで勉強して帰ったら忘れるのではなく、次の日から何か一歩を踏み出してほしい。そのために、環境ミュージアムは、子どもたちを含め来館者が家に帰ってから何かをしてくれるように、ということを常に念頭に置いた展示や活動を行うように努めています」。

「ひどい公害を経験したことから、北九州市ではもともと市民が主体となってゴミの削減への取り組みなどが行われてきました」と小林氏はいう。環境に配慮した企業活動や生活が社会に浸透し、SDGsという世界共通の目標が掲げられている昨今、これらへの取り組みはすでに北九州市民がこれまで行ってきたことでもある。小林氏は今後も継続し、その取り組みを市内外にしっかりアピールしていきたいと述べた。

市民ボランティアと紙をテーマにした体験コーナーを楽しむ子どもたち

記事の公開期限:2020年06月07日

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