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内発的発展を担う人を育てる 事業構想大で学ぶ地方の活性化

記事提供:事業構想

事業構想大学院大学には、自らの地元を持続的に発展させることを目標に入学する学生も多い。2期目を迎えるまち・ひと・しごと創生戦略では、低炭素社会やSDGs目標達成が重要になる。再生可能エネルギーや循環型経済などを軸に、人々と共に地域をつくる人材を育成していく。

事業構想大学院大学で「地域活性と事業構想」という授業を担当して、2年目に入った。本学は、卓越した発想及びその発想を実現する構想力を持ち、かつ事業を継続的に進化させ日本社会の一翼を担う志を持ち実行できる人材の育成を目的としている。求める人材像の一つとして、「地域活性化を志す者」を掲げていることもあり、全体的に院生の地域活性化への関心が高い。

「地域活性と事業構想」の授業を受講する学生も、地方出身者や、そうでなくとも、日常的に業務を通じ、地域との付き合いがある者など、何らかのかたちで地方と縁がある者がほとんどである。したがって、地方への愛着が高い一方で、地方との付き合い方や地域活性化のアプローチについて、いろんな疑問や悩みも抱えているようで、非常に興味深い。

持続可能な地方創生に必要な「内発的発展」

ある院生からは、「地方でワイナリーがたくさんできて、ワインを生産しているが、なぜあのクオリティーで作り売ることができるのか。ワインを扱うプロの視点ではありえない。」という質問があった。また、別の院生は、「ある地域で食を通じた地域活性化事業に関与しているが、我々のような民間企業が関与しているうちは良いが、そのあと、誰がどう事業を継続していくのか。プロに任せなければできないこともあるが、プロと仕事をしつつ、自分たちでもできる力を磨いていかなければ、本当の意味での地域活性化にならないのではないか。」と悩みを打ち明けてくれた。

かつて主流であったのは、大企業や公共事業の誘致に、地域の運命を預けるような「外来型開発」(宮本, 2010,p54)。これに対し、「地域の企業・労働組合・協同組合・NPO・住民組織などの団体や個人が自発的な学習により計画をたて、自主的な技術開発をもとにして、地域の環境を保全しつつ資源を合理的に利用し、その文化に根ざした経済発展をしながら、地方自治体の手で住民福祉を向上させていくような地域開発」(宮本, 2007, p316)、いわゆる「内発的発展」の重要性が認識されるようになって久しい。地方創生においても、地方公共団体が自主性・主体性を最大限発揮して、「内発的に」取り組むことが求められた。

これまで内発的発展の精神でまちづくりに取り組んできた地域では、「地方創生」の後ろ盾を得て、ますます創意工夫をもってより良いまちづくりに取り組み、その地域の存在感を確実に高めている。

一方で、上述の「外来型開発」頼みほどではないが、いまだに町の重要な活性化やプロモーション企画を都市部の事業者に丸投げしたり、箱モノや交付金ありきの活性化事業が先行する事例は後をたたない。果たしてそれでよいのだろうか、とお節介ながら心配してしまうケースも散見される。私自身、研究フィールドとして通い続けている長野県のある町で、駅前に地方創生推進交付金で箱モノを作る計画が浮上した際に、「箱モノ1つつくって駅前が活性化するとは思えない」と町の人々自身がそのアプローチ自体に異を唱え始める現場を目の当たりにした。

「内発的発展」の議論で誤解をしていただきたくないのが、「外来の資本や技術をまったく拒否するものでない」(宮本、2007、p317)、ということである。地域外の人々や事業者との連携、域外資本の受け入れは、地域づくりに大きな可能性を与えてくれる。ただしそれは、その地域自身が、自分たちの未来を真剣に考え、地域固有の文化や歴史、資源を活かしながら、どのようにしたいか(ありたい姿)、どのようにすべきか(あるべき姿)、をしっかり考え、地域主体で自主的な決定と努力が行える、という前提においてである。

とはいえ、2014年に日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」の衝撃は大きかった。消滅可能性を突き付けられ、もうこの地域には未来はない、と思考停止に陥ってしまった地域も少なくないだろう。そのような地域が、その地域の存続に、どのような意義を見出し、どのように未来を描きえるのか。

エネルギーの地産地消でよみがえる地域

筆者らは、太陽光や太陽熱、水力、風力、 バイオマス(薪炭、チップ、農・畜産業残渣)、 地熱などの再生可能エネルギー(以下「再エネ」と略す)は、国土面積の大半を占める農山漁村に多く存在することから、再エネを地方創生に最大限生かすべきと、主張してきた。再エネ資源に恵まれない都市部は基本的に高炭素なライフスタイルを余儀なくされるため、都市部から多くの人々が再エネに恵まれた地方に移住して低炭素な生活を送ることによる、二酸化炭素排出量の削減効果も大きい(下図参照)。このように、地球の深刻な温暖化と気候変動に伴い動き出している、脱炭素社会への世界的潮流のなかで、地方が再エネを活用し、低炭素型ライフスタイルを実現しながら人口還流を目指すのであれば、地方創生は、ますます大きな意味を持つ。

地域偏在型再エネによる還流可能人口ポテンシャル

全国の中山間地域(昭和25年市町村境界)ごとに、現在人口分のエネルギー消費をまかなったとしても余剰となる自然エネルギー量(風力発電、中小水力発電、地熱発電、森林バイオマス)で、さらに自給可能な人口を、昭和25年人口を最大居住可能人口として推計した結果、全国で約470万人の還流可能ポテンシャルがあることが明らかになっている(Horio, et al., 2015)。

 

総面積の8割を森林が占める岡山県真庭市では、地域の特性を生かした木質バイオマス発電を行っている。同市は2018年にはSDGs未来都市に選定された

第2期のまち・ひと・しごと創生総合戦略の策定に向けても、SDGsの実現など持続可能なまちの観点から、「地方創生」と「地球温暖化対策」や「再エネ等の最大限の活用」の戦略的統合が図られようとしている。ただし、地域に住む人々の視点に立てば、再エネ等地域の未利用資源の活用が、いかに地域の人口の取り戻しや、新規定住者受け入れに必要な所得の増加などにつながるのか、地域のメリットとしてわかりやすく示されなければ現実味を帯びない。この点については、筆者らが環境省から委託を受けて実施した「環境経済の政策研究」(2015-2017年度、研究代表者 藤山浩)の成果をとりまとめた書籍、『「循環型経済」をつくる』(2018年、農文協)をご参照いただきたい。

当然のことであるが「地方創生」は、地球温暖化対策のため、国家の存続のため、都市部の事業者のためではなく、まずは地方に住む人々のためのはずである。そこに住む人々が、この地域には未来がない、何をしても無駄だ、と思ってしまえば、そこで終わりである。しかし、本学には、それではだめだ、地方を、地域をどうにかしなければ、という志を持つ者が多く集まることに大きな希望を感じている。地域の存続に意義と意欲を見出し、ありたい姿、あるべき姿を描き、その未来に向かって進んでいくための事業構想、また、そういった地域の気持ちに寄り添い、支援しようとする事業構想を、引き続き全力で応援していきたい。

【引用文献】
藤山浩『「循環型経済」をつくる』農文協、2018年宮本憲一『環境経済学 新版』岩波新書、2007年宮本憲一『転換期における日本社会の可能性 維持可能な内発的発展』公人の友社、2010年
Horio M., Shigeto, S. Ii, R., Shimatani, Y., and Hidaka, M.,” Potential of the’ Renewable Energy Exodus’ (a mass rural remigration)for massive GHG reduction in Japan”, Applied Energy 160, 2015, pp623-632

記事の公開期限:2020年10月10日

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