LIXIL、SDGs目標6「安全な水とトイレ」で新事業 ユニセフと連携
開発途上国向け簡易トイレ「SATO」を持つインドの女の子たち ©LIXIL
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)とLIXIL(東京都千代田区)は、「持続可能な開発目標(SDGs)」で掲げる目標「安全な水とトイレを世界中に」の実現に向け、世界の子どもたちの衛生環境を改善するため、新しいアプローチで取り組むグローバルパートナーシップを締結した。
「Make a Splash! みんなにトイレを」と名付けられたこのパートナーシップは、ユニセフとLIXILがそれぞれの強みを活かしながら、SDGsのターゲットのひとつ「2030年までに、すべての人びとの、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性および女児、ならびに脆弱な立場にある人びとのニーズに特に注意を払う」の実現を目指すものだ。
新しいパートナーシップでは、ユニセフとLIXILは、以下の活動を展開する。
- 衛生市場を確立するとともに、トイレを必要とする人びとに低価格で製品が提供されるよう、マーケット主導型のプログラムを展開する。まずは、エチオピア、タンザニア、ケニアの3カ国で開始する。
- 衛生市場の確立により、開発の機会が創出できることを協働で政策提言し、より多くの人びとへの認知を図る。
- 各国におけるプログラムの拡大を支援するため、LIXILは資金調達と啓発活動を広く行う。

現地で「つくる」「うる」「つかう」で事業も創出
ユニセフとLIXILによると、世界では、今でも23億人(約3人に1人)が安全で衛生的なトイレのない生活を送り、そのうち8億9200万人が日常的に屋外で排泄している。屋外排泄は、極度の貧困と不公平性を示している。
また、未然に防ぐことができる5歳未満の子どもの死亡のうち、圧倒的に多いものが水と衛生に起因する病気だ。毎年世界中で28万8000人の5歳未満の子どもが、安全な飲料水が得られず、劣悪な衛生環境による下痢性疾患で亡くなっている。病気の感染拡大を予防し、子どもたちが健康で尊厳ある生活を送るために、安全で清潔なトイレはなくてはならないものだ。
LIXILは、トイレや風呂、キッチンなどの水まわり製品と、窓やドアなどの建材製品を開発・提供し、世界150カ国以上で事業を展開している。同時に、開発途上国向け簡易トイレ「SATO(Safe Toilet)」をアジアやアフリカの国々へ寄付し衛生環境の改善につなげる活動に取り組んでいる。この活動は、2016年から本格的に事業化し、同社は2020年までに「1億人の衛生環境を改善する」という目標を掲げて展開している。
これまでに、インド、ケニア、ウガンダ、タンザニア、エチオピアなど、15ヵ国以上で「SATO」の導入を進め、600万人の生活環境の向上に貢献しているという(2017年9月現在)。また、同社は「SATO」を各地域で生産することで、現地の人々が購入できる低価格に抑えている。日本から支援を受けるという受け身の体制ではなく、現地に根差した事業として雇用を創出し、「つくる」「うる」「つかう」というサイクルを確立している。
ユニセフが新しい形で企業と連携
今回の両者による連携は、水と衛生の分野でユニセフが結ぶ初のグローバルな「シェアードバリュー・パートナーシップ」で、日本企業とのこの種のパートナーシップの締結は初となる。
また、これは、これまでユニセフが実施した中でもっとも意欲的なパートナーシップで、ユニセフと企業との連携の新しい形を示唆するものだという。連携する相手企業の中核事業とユニセフの活動がさまざまなレベルで関わり、共に力を合わせ、世界の子どもたちの環境を大幅に改善することを目指す。
ユニセフは、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために、活動する国連機関。現在190の国と地域で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移している。
すでに両者はアフリカにおいて協働した実績を有しており、安全で衛生的なトイレを必要とする人々に対して、現地のニーズにあわせてLIXILが設計したトイレを提供してきた。この取り組みを拡大し、より多くの人びとの衛生環境を改善するため、両者は新たな連携のあり方について検討を重ねてきた。
SDGsで年間12兆ドルの市場を創出との試算も
「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2015年に国連で採択された、2030年までの国際目標。環境、経済、社会が抱える課題を統合的に解決することを目指し、17の目標と169のターゲットを掲げている。環境省が作成した「SDGs活用ガイド」では、SDGsによってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドルとの試算結果を紹介している。
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