Sustainable development goals

ニュース・コラム

西粟倉村など新構想 「地方創生ICO」で資金を調達

記事提供:事業構想

(左)正田英樹 chaintope代表取締役社長/(一財)日本地方創生ICO支援機構 代表理事
(右)深堀剛 chaintope地方創生ICO推進事業リーダー/(一財)日本地方創生ICO支援機構 常務理事

岡山県西粟倉村が6月、日本で初となる地方自治体による「地方創生ICO」を実施すると発表した。この仕組みづくりから運営までを一手にサポートするのがchaintope。代表取締役CEOの正田英樹氏は、「地方創生とICOは相性がよく、地方の魅力を世界に発信することにもつながる」と語る。

ICO(Initial Coin Offering・新規仮想通貨公開)とは、企業や団体がブロックチェーン上でトークンと呼ばれる独自の仮想通貨を発行して投資家から資金を調達する手法。世界のICOによる資金調達額は近年急伸しており、2015年には3900万ドル、16年に2億5600万ドル、17年には57億ドルに達している。

chaintopeはブロックチェーンの研究開発から社会システムの構築まで手掛ける企業だ。正田氏は20年ほど前から福岡県飯塚市に拠点を置いて起業し、4年前から「ブロックチェーンはインターネットに欠かせないインフラになる」とその可能性に着目し、地域に根差して研究活動を続けてきた。そして、近年地方創生における資金調達の難しさを目の当たりにし、ICOを活用する着想を得た。

ICOの成否のカギを握るのは、投資家を募るための事業について説明する、いわゆるホワイトペーパー(事業計画書)だ。「地方創生事業のホワイトペーパーを公開することは、地方自治体の魅力を世界に伝えられます。さらに、仮想通貨を利用するので、ネットを通じ世界から資金を集めることができます」と地方と世界をつなぐICOの可能性を説く。

また、「一過性の”投資”と異なり、投資家がトークンを保有することで、地方自治体を継続的に応援することにつながり、地方自治体と投資家との間にトークンコミュニティが形成されます。そのほかにも、集めた資金について自治体は責任を負わなくて済むこと、集められる資金の額が大きいなどの、地方創生でICOを活用するメリットがあります」と説明する。

さらに「地方創生ICOは、継続性があり価値が変動する点においてはIPOと、応援や支援でプロジェクトが実現されるという点ではクラウドファンディングと、地域で使える通貨という意味では地域振興券と似ています」と他の資金調達、流通法の良い点を併せ持っている点を強調した。

また、正田氏は今回スタートさせる「地方創生ICO」ならではの特色について「SDGs×Local×ICOという3つのキーワードの掛け算で表せます。中でもSDGsに則った地方創生をICOで支援する仕組みに注力したいと考えています」と語る。地方自治体が2015年の国連サミットで採択された17ある「持続可能な開発目標」をベースに総合計画を立案するようになる中、地方創生ICOへの投資は、「多様な価値に対して興味を持って投資するので、単なる投機対象とは一線を引いています」と話す。

図 地方創生ICO全体図と流れ

図 地方創生ICO全体図と流れ

ICOはゴールではない

では、実際にどのように資金調達を行うのか。地方自治体は、同社と仮想通貨取引所が共同で運営する「地方創生ICOプラットフォーム」に参加。このプラットフォームが、ICOを実施したり、地方自治体が認定した地方創生事業の推進事業者に集まった仮想通貨の分配などを担う。

地方創生事業とICOはいずれも公共性が高いので、それらの啓蒙や実施支援、コンサルをする(一財)「日本地方創生ICO支援機構(JARICOS)」を同社は同時に設立し、地方創生ICOの基盤づくりを担当する。そこにはICOが投機対象とならないような仕組みも導入する考えだ。

「我々のゴールは地方創生。ICOがゴールではないと自治体にも伝えています。地方創生が成功するまでサポートし続けたいですね」と同社地方創生ICO推進事業リーダーの深堀剛氏。

西粟倉村の挑戦

2018年6月、岡山県西粟倉村は全国で初めてとなる地方創生ICOの実施を発表した。西粟倉村は面積約60㎢、人口1500人足らずの小さな村で、面積の95%を森林が占めている。周囲の自治体が合併をして行く中で自立の道を選び、「百年の森林構想」を掲げて村独自で森林の保全管理に取り組み、間伐材を利用した商品開発、販売、流通など林業の六次産業化を図った結果、木材産業の売り上げは1億円から約8億円に伸びた。移住者を積極的に受け入れ、ローカルベンチャーの育成にも力を注いでいる。

西粟倉村が発行を予定しているのが「Nishi Awakura Coin(NAC)」だ。新たにNAC保有者を巻き込んだ「トークンエコノミー」の形成も目指している。ICOの実施時期は2020年を目標にしているが、制度面がまだ整っておらず、いくつもの認定・認可を経てからの実施となる。

日本には、地方に国から交付金などの資金が下りてくるという構図ができあがっており、自治体独自で企画し実践していく風土があまりなかった。今でも、国から渡されるメニューにきっちり従っていけば安泰だと考えている自治体があるかもしれない。

一方、地域に張り付いて頑張っているローカルベンチャーはたくさんある。「ただ地域を盛り上げようと志高いメンバーがいても、初期費用がかかり過ぎてやれることは限られ、長続きせずに終わってしまうケースが多くあります。自治体とローカルベンチャーが組んで新たなことにチャレンジしていくことがこれからの地方には必要です」と地方創生ICOの果たす多様な可能性を見据えている。

記事の公開期限:2019年02月28日

関連記事