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大学発ベンチャーとして初上場、日本独自の技術でSDGs達成に寄与

記事提供:環境ビジネス

微細藻類『ミドリムシ』を起点に栄養・健康領域やエネルギー領域の事業に取り組むユーグレナ。同社の生い立ちはSDGsに深くつながる。ミドリムシに社会課題解決のカギを見出し、大学発ベンチャーとして初めて上場を果たした創業者の出雲 充氏に、SDGs達成に必要な〈イノベーターシップ〉とは何かを聞いた。

事業を通じて世の中にインパクトを

ミドリムシと廃食油を使ったバイオジェット燃料の開発に挑むユーグレナは、2018年10月31日、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを完成。横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、ひろしま自動車産学官連携推進会議の協力のもと、SDGsのゴール13『気候変動に具体的な対策を』に貢献する取り組みとして、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』を宣言した。

2015年12月から『2020年までに国産のバイオ燃料で飛行機を飛ばし、バスを走らせる』国産バイオ燃料計画をスタートさせた同社。社長の出雲氏は、「理想、グランドデザインを描き、その実現に向けて多くの人がサポートできる社会になれば、事業が世の中に与えるインパクトは大きくなります」と話す。

ユーグレナ創業のきっかけは、出雲氏が学生の頃に訪れたバングラデシュで見た、栄養失調に悩まされている多くの子どもたち。この子どもたちに栄養価の高い食べ物を届けたいと解決策を探るうち、ミドリムシにたどり着いた。

株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
出雲 充氏

出雲氏は、植物性・動物性双方の栄養素を持ちながら大量培養は不可能とされていたミドリムシの培養に挑戦し、2005年に世界初となるミドリムシの屋外大量培養に成功した。世界中で栄養失調に苦しむ10億の人々に新鮮な野菜や卵を届けることは不可能だが、毎日10億個(錠剤5粒ほど)のミドリムシを届けることはできる。ミドリムシで地球から栄養失調を根絶する、『ミドリムシで世界を救う』のが、同社の創業からのミッションのひとつだ。

創業のきっかけとなったバングラデシュでは、グラミン銀行の創設者であるムハマド・ユヌス氏が、マイクロクレジットの実現により約850万人ものアントレプレナーを生み出した。ユヌス氏を師と仰ぐ出雲氏は、「バングラデシュには、世界で最も貧しい農家の約850万人を社長にしたという成功事例があります。そのバングラデシュで、栄養失調にあえぐ1000万人の人をミドリムシで健康にすることは、必ずできると信じています」と話す。

ミドリムシで「飛行機を飛ばす」

ユーグレナは食料としてだけでなく、バイオ燃料としてのポテンシャルも秘めている。しかし、『ミドリムシでつくった燃料で飛行機を飛ばす』と発表した3年前、それが可能だと信じる人はほとんどいなかった。ところが、CO2をこれ以上増やさずに新エネルギーを作り出す工場が実際に完成すると竣工披露の記者会見には多くのメディアが集まった。

「中国、アメリカ、欧州…。バイオジェット燃料を使った飛行機が、世界ですでに15万回も飛んでいます。日本はゼロ。来年もゼロです。私は、2020年には、石にかじりついてでもミドリムシ入りバイオ燃料で飛行機を飛ばそうと思っています。準備万全整ってからでないと実行しないのが日本人の特性ですが、あらゆる人に説明して協力してもらうのに、こんなに時間がかかっていたら、イノベーションはなかなか起こりません」

日本人のマインドセットを変える、最後のチャンス

欧州の人々は、グランドデザインを構想し、理想に命を燃やすことに長けている。SDGsの169のターゲットには、誰がどのターゲットをどう進めるかといった手順は定められていない。

出雲氏は、SDGsは日本の土壌をイノベーションが起きやすいものに変える、『最後で最大のチャンス』だという。

「私は、SDGs達成のカギは日本の科学技術だと思っています。ただ、日本の科学技術で2030年にSDGsを達成しても、そもそもの計画を構想して動かしたのは欧州、国連だということになってしまうでしょう。グランドデザインを打ち出すということは、本当に重要なのです」。

新しいチャレンジには成功事例が必要だ。その成功事例をつくり出すのは、ベンチャー企業だといえ、ベンチャーにこそ、SDGs達成のカギがある。ユーグレナはSDGsを達成するために創業した会社ではない。創業の目的が後から起こったSDGsにつながった。

「私たちのように、社会課題を解決したくてスタートしたベンチャーにとって、SDGsは前向きなメガトレンド。とてもわかりやすい追い風です」

勢いを持つベンチャー企業こそ、SDGsの風に乗ってイノベーションを起こし、SDGsを達成させる原動力となりうるのだ。

まず行動を起こしイニシアチブをとる

『SDGs達成のカギは日本の科学技術』

大航海時代は欧州からスタートした。当時、日本にもテクノロジーはあったが『10回行って10回帰ってくること』を重要とする日本は、なかなか未知の世界へ出発できない。100年に1度の台風が来ても大丈夫なスペックの船をつくろうと思えば、時間も資金もかかる。

SDGsに関して、イニシアチブをとって世界をリードしているのは欧州だが、そろそろ日本もこの先頭グループに加わるべきだと出雲氏はいう。

「SDGsという言葉を借りてこなくても、〈三方良し〉の思想は昔から日本にありました。SDGsは、そういう会社が成功してイニシアチブをとっていくチャンスです。社会課題の解決や17のゴール達成にはテクノロジーが必要で、そのテクノロジーが日本にはあるのですから」

98点の企画書や事業計画書を99点や100点にすることを考えていては、いつまでもスタートできない。50点で間違いの多い事業計画書でも、まず行動を起こしていくことが大切だ。

「Howが固まっていなくても動き出す人をみんなで支える社会が必要ですし、減点方式でジャッジするのではなく、新しいチャレンジをしているアントレプレナー、チェンジメーカーを応援できる社会にしていくことが重要です」

記事の公開期限:2019年11月17日

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