Sustainable development goals

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木質バイオマスの利活用を基盤にした先進的なSDGsの取り組み

記事提供:環境ビジネス

皆さん、こんにちは、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(略称:JWBA)の秋葉 裕之と申します。今回の連載では、最近注目されている持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)の取り組みを通して、木質バイオマス利活用の重要性についてご紹介します。

我が国におけるSDGsの取り組みおよびSDGs未来都市の選定

SDGsは、2015年9月の国連サミットにて「2030アジェンダ」に採択され、国際社会全体の開発目標として経済・社会・環境をめぐる広範な課題に取り組むことと、2030年を期限とする包括的な目標設定がされました。これをもとに、我が国として「持続可能で強靭、そして誰一人残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」とするビジョンを掲げ、8つの優先課題と具体的施策が、「SDGs」の実施指針として示されています。木質バイオマス利活用にかわることとしては、『省・再生エネルギーの導入、気候変動対策、循環型社会の構築』と、『生物多様性、持続可能な森林、海洋資源などの保全』などの施策に当てはまります。

木質バイオマス利活用にかわることとしては、『省・再生エネルギーの導入、気候変動対策、循環型社会の構築』と、『生物多様性、持続可能な森林、海洋資源などの保全』などの施策に当てはまります。

内閣府は2018年6月に、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する29箇所の「SDGs未来都市」を選び、その中で先導的な取組10事業「自治体SDGsモデル事業」を選定しました。選定されたモデル事業で、北海道下川町、岡山県真庭市、熊本県小国町など、木質バイオマスエネルギーの利活用を中心においた取り組みが採択されました。今回は真庭市のSDGs未来都市構想を取り上げ、その基盤にある木質バイオマス利活用の実績や事例を紹介します。

『2030年SDGs未来杜市真庭』が目指す姿

真庭市が提案したSDGs構想は、「里山資本主義」の理念を発展させ、中山間地域における地方分散型のモデル地域を目指し、人口減少の抑制、木質バイオマスによる地域エネルギー拡大に向けた取組を強化し、地域の森林資源を活用したCLT(直交集成板)等の木材需要拡大、バイオマス液肥を活用した農業推進、独自の観光事業の促進や人材の育成などを連携させて、循環型の「回る経済」の確立を目標に掲げています(図1)。

図2:QRコードを用いた木質バイオマス証明の様式例

図1:岡山県真庭市の永続的発展に向けた地方分散モデル事業
出典元:内閣記者会・経済研究会クラブへの報道資料(H30-6-15)より引用 内閣府地域創生推進室

木質バイオマス利活用の実績

岡山県北部に位置する真庭市は、良質なヒノキの産地と知られ、森林資源の育成や活用に関する土壌があります。林業が盛んな下地を生かして、環境に優しいバイオマス産業を軸としたエネルギー施策の一貫として、真庭市含め官民10団体の出資をもとに設立された真庭バイオマス発電株式会社(発電出力10,000kW)が2015年4月から稼働しました。

同発電所を含めた真庭市の再生可能エネルギー自給率は33%(木質のみ、2017年)に達しています。NPO法人環境エネルギー政策研究所永続地帯2017年度版報告書よると、2017年の真庭市全体における再生可能エネルギー自給率は85.1%と報告されており、その約4割が木質バイオマス発電により占めていることになります。

同発電所は年間の発電量約81,000MWhを供給し、売上が年間約23.8億円、燃料購入費が年間約13.8億円(石油代替で21.5億円相当)、50人程度の雇用創出、CO2削減量が約68,000トンの効果をもたらしています。バイオマス発電によって、地域経済の活性化を促し、経済・環境の両面において、地域エネルギー自給率100%の「エネルギーエコタウン真庭」に向けて、災害時にも強い安全、安心なまちづくりの取組を推進しています。

社会的な側面として、地域で生み出したエネルギーをその地域で使う地産地消、エネルギー自給自足へ向けたシステムの取り組みをしています。また、地域新電力の真庭バイオエネルギー株式会社を通して、市内のこども園や小中学校など47施設の公共施設に電気を順次供給し、環境教育などの取組も行われています。

真庭バイオマス発電所のKeyとなっている地場の有力企業である銘建工業株式会社(以後、銘建工業)は、工場内に木質バイオマス発電設備(発電出力1,950kW)を有しており、培った『Know-How』を真庭バイオマス発電所の運用に展開しています。更に、市内の熱利用ボイラーの燃料材として木質ペレット生産も手掛けており、木質バイオマス利活用推進の一躍を担っております。同社は、同発電所に隣接して、断熱、耐火、耐震性などの環境性能に優れたCLTの量産工場を建設し、バイオマス発電所から発生する蒸気を木材原料の乾燥にも使っています。

真庭バイオマス発電の工夫

真庭バイオマス発電所の運営方法の特徴として次の2つがあげられます。一つは、発電所の未利用材チップ買い取りに際して、水分55%以上60%未満では7,000円/トン、水分45%以上50%未満では10,000円/トンなどと水分率で燃料価格を変えることで、燃料供給者に燃料の品質維持を促す良い効果が出ています。これによって、計画時の必要燃料見込み14.8万トン/年から、実際には10万トン/年程度に約30%削減されており、木質バイオマスを有効に活用しています。

もう一つの工夫は、発電用木質バイオマス燃料の証明の確認方法です。発電所に搬入される燃料チップのトラック1台毎に、加工工場のみならず山林所有者や流通業者の情報や証明書の連鎖を、ICT技術で一元管理しており、搬入時にQRコードで受け入れの確認が出来る体制になっています(図2)。このシステムを導入するとともに、山林所有者に対して、木材の売り渡し価格以外に1トンあたり500円を利益還元する制度を設けて、2017年6月時点で累計約6,500万円が還元され、山林所有者の適切な間伐や林地残材の搬出を促進しています。

図2:QRコードを用いた木質バイオマス証明の様式例

図2:QRコードを用いた木質バイオマス証明の様式例
(引用元:真庭バイオマスツアーにて紹介)

SDGs達成には官民協調が必須

SDGsの達成のためには、自治体のみならず、民間セクターが公的問題の解決に貢献することが重要であり、民間企業が有する資金や技術、金融機関などのESG(Environment、Social、Governance)投資をもとに、持続可能性に配慮して社会課題の解決に役立てていくことが鍵となります。社会貢献活動の一環として取り組むだけでなく、自らの本業に取り組み、ビジネスを通して地域の社会的課題の解決に、積極的に関与していくことが大事になります。

真庭の取り組みを更に知りたい際には、2018年9月26日~28日にインテックス大阪にて開催される「第3回関西バイオマス発電展」で、JWBAの副会長でもある銘建工業代表取締役中島 浩一郎氏が「真庭バイオマス発電所が実現する地域経済活性化の取組み」と題する基調講演をしますので、興味のある方は是非とも、聴講をお薦めします。

記事の公開期限:2018年12月29日

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