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ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第2回(投資家/金融機関)

記事提供:環境ビジネス

前回、SDGsの「主流化」に触れましたが、この主流化をけん引している一つの要素がESG投資の加速であり、投資家は事業会社にはSDGsの実践を求めています。この意味で、投資ではSDGsとESGが表裏の関係でとらえられています。

今回は、2018年11月開催の経済産業省「第1回 SDGs経営/ESG投資研究会」でも紹介された、著者が考案した「ESG投資とSDGs相関整理図(笹谷マトリックスモデル)」も併せてご紹介します。

SDGs実践に向け、企業がすべきことがわかる今回の連載、ぜひご活用ください。

1、ESG投資とSDGs その基本をおさらい

(1) 増加するESG投資

ESG投資が加速している。ESG投資は、2006年の「国連責任投資原則(PRI)」の提起がきっかけである。これ以降、PRIへの署名機関の数が急速に増加し、投資額も相当に増えている。

図表の通り、2006年以降PRIへの署名数が拡大し、ESG投資が世界中の機関投資家間に波及。最新では2,000以上の世界の機関投資家が署名し、日本では67の機関が署名している。総額で60兆ドルを超えたともいわれる。

ESG投資のうねり

しかし、ESG投資額の地域別内訳を世界全体のESG投資残高でみると、16年には22.9兆米ドルで、それに占める割合は欧州が52.6%、米国が38.1%であるのに対し、日本は2.1%であった。このように日本は大きく出遅れたが今後増加が見込まれている(出所: GSIA (2016)Global Sustainable Investment Review)(「PRI」とSDGsについては、こちらの記事を参照)。

(2) 押さえておくべき政策の動き

日本では、政策面では、2013年の安倍政権の成長戦略「日本再興戦略」でできた「日本版スチュワードシップ・コード」と「日本再興戦略改定版」(2014年6月)で示され2015年から導入された「コーポレートガバナンス・コード」が重要である。

2017年には、「伊藤レポート2.0」(「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)が公表され、その中で価値創造ガイダンスを示しサステナビリティ・マネジメントと企業の競争戦略の早急な見直しが提唱されている。

日本再興戦略とESG

2、サステナビリティ・マネジメントと「SDGs経営」

(1) 日本でのESG投資の特色

日本でのESG投資の加速要因は、運用資産額約160兆円という世界最大の機関投資家である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の動きである。

GPIFは2015年9月にPRIに署名し、ESG投資の推進を明確化した。さらに17年7月には、ESGに積極的に取り組む日本企業を構成銘柄とする新しいESGインデックス(株式指数)を3つ発表し、同インデックスを用いた運用を既に1兆円規模で開始したと公表した。

その上、GPIFがホームページなどで、ESG投資にはPRI、企業はSDGsを活用すべきとの認識を示し、ESGとSDGsを関連付けて説明している(下図)。これは投資界をはじめ関係方面に大きな影響を与えている。

また、GPIFでは、PRIへの署名とSDGsをリンクさせ、ESG重視が良質な投資機会の増加につながり、事業会社がSDGsを事業機会の増加にもリスク回避にも使って競争優位につなげることを推奨している。

このように『投資家と事業会社の間のWin-Win関係を築くためにはどうすればよいか』が、今のポイントになっている。日本では投資サイドがけん引し、経済界ではESGと裏腹の関係でSDGsが話題になっているのが現下の特徴である。

ESG投資とSDGsの関係

(2) 「投資家・金融機関へSDGsをどう伝えるか」実践方法を解説

GPIFが明記しているように、ビジネスのSDGsとESGは「裏腹の関係」にある。ESGは投資家のチェック項目、SDGsは事業会社のTo Doリストで投資家はその実行を評価要素としている。

企業にとって、いよいよ持続可能性を織り込んだ「SDGs経営」時代の到来である。企業が「SDGs経営」を実践する方法として

  • まずはESGのE、S、G各項目で「やるべきことリスト」の洗い出しをすすめる
  • そのため、ESGを世界標準であるISO26000の7つの中核主題やグローバルコンパクトに即して整理する
  • その上で、ESGを整理した対応項目を縦軸に、SDGsの17目標を横軸に整理したマトリックスをつくってみる

が有用である。

これは2017年に「笹谷マトリックスモデル」としてつくったものだ。なお、上記考え方をわかりやすく整理したのが下図だ。

ESG投資とSDGsの関係(2)

「第1回 SDGs経営/ESG投資研究会」(経済産業省)で紹介された「笹谷マトリックスモデル」

2018年版の統合報告などで、このマトリックスを採用して整理する企業が増えているという。

なお、この図は、2018経済産業省が立ち上げた「SDGs経営/ESG投資研究会」(座長:伊藤 邦雄一橋大学大学院 経営管理研究科 特任教授)の事務局説明資料のなかでも紹介がなされた。

今後これが、ESG/SDGsに関する議論に役立っていけば幸いである。

SDGsは企業にとってのチャンスである一方、リスク回避にも使えるリストである。この両面で競争優位が実現して社会課題解決のリスク回避にもなっていく。これにより、経済価値と社会価値の同時実現を目指すCSVをSDGsによりバージョンアップしていくのがSDGs経営の要諦である。SDGs体系化の整理はマテリアリティ選定という経営の重要事項の洗い出しにつながっていくので重要である。

連載

  1. SDGsをどう理解するか 第1回(CSR・CSVとの整理)
  2. SDGsをどう理解するか第2回(ESG投資との整理)
  3. SDGsをどう理解するか 第3回(SDGsの概要と特色)
  4. SDGsをどう理解するか 第4回(パリ協定・脱炭素との整理)
  5. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第1回(取引先/サプライチェーン)
  6. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第2回(投資家/金融機関)
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

株式会社伊藤園
顧問

東京大学法学部卒、1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、2010年~2014年取締役。2014~2018年4月常務執行役員CSR推進部長、2018年5月より現職。
主な著書に、「CSR新時代の競争戦略─ISO26000活用術─」(日本評論社、2013年)、「協創力が稼ぐ時代」(ウィズワークス社、2015年)『経営に生かすSDGs講座─持続可能な経営のために─』(環境新聞ブックレットシリーズ14)新書(環境新聞社・2018年)など。
日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事、通訳案内士資格保有(仏語・英語)学校法人千葉学園評議員、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員(平成26年度より)を兼任。

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