Sustainable development goals

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ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第4回 (採用)

記事提供:環境ビジネス

前回までの連載(「取引先/サプライチェーン」「投資家/金融機関」「社内/インナー」)で、対外的・対内的にSDGsを導入する方法を紹介いたしました。これらの方法でSDGs経営に持ち込んでいくことができます。そしてSDGs経営は、採用面でも大きな効果を発揮するのです。

ミレニアル世代・ポストミレニアル世代とSDGs

(1)拡大し、進展するSDGs経営

政府の「SDGsアクションプラン2018」および「同2019」では、日本の「SDGsモデル」の3本柱として次のものが掲げられている。

  • 「Society 5.0」SDGs
  • 地方創生SDGs
  • 次世代育成SDGs

「Society 5.0」の事例としては、ICT企業のNECネッツエスアイ社の代表的なソリューション「エンパワードオフィス」(EmpoweredOffice)などに触れている。

地方創生SDGsでは、「SDGs未来都市」を29選定し、うち先進的な10自治体に助成金を出している。今後、企業も本業力を駆使して参画し、ビジネスチャンスをつかむべきである。

このように、各企業・団体が本業を生かしたSDGs経営を本格化させている。これらの事例では、企業ブランディングとインナーブランディング(社員モチベーションの向上)につなげ、内外で評価を高め企業経営にSDGsを生かしている。

SDGs経営でのブランドデザイン

(2)ひとづくり革命とSDGs

ひとづくり革命は「骨太の方針」でも重要な項目だ。初等~高等教育に加え、より長いスパンで学ぶリカレント教育の重要性が高まり、人生100年時代を見据える。教育を担う大学でも「SDGs経営」の考え方で差別化・ブランド化が求められる。

この場合、特に、ミレニアル世代・ポストミレニアル世代など、若い人の方が柔らかい頭を持っているので、理解が非常に早いと感じている。これらの世代の方々は、SDGsのような価値観は当然だと思っている比率が高い。

そして、企業が、SDGsを自分ごと化していく流れのなかで、学生は、それを主体的に受け止め、自ら提案したり、発信したりしていくことが大切だと思われる。仮に理解が少々誤っていたとしても、発信することで周囲からの反応があるので、それを受けて自己修正していけば良い。SDGsを使わないことには始まらない。その意味で、発信とわかりやすさが大事である。

(3)必要なのは次世代へのパブリックリレーションズ

これら企業のSDGs活動を大学生をはじめ若者にわかりやすく伝えることも要点だ。幅広い方々(パブリック)にお伝えしていく本来的な意味での「パブリックリレーションズ」が求められる。

私も理事をしている「グローバルビジネス学会」はこの点も重視して、グローバル視点でのビジネスや人材育成に力を入れている。この面では、特に、クリエイティブの役割も期待される。

博報堂は、SDGsの普及・啓発を担う国際連合広報センターと協力し、2016年にSDGsの公式日本語版アイコンと公共広告映像を制作した。電通は2018年に企業向けに「SDGsコミュニケーションガイド」をつくり発表した。宣伝会議グループの各媒体では本連載をはじめとし、関連する教育機関である学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 事業構想研究所のSDGs総研からも精力的に発信が行われている。

優秀な人材は、SDGs経営企業に集まる

(1)採用にも影響を与えるSDGs

SDGs経営では目標4の「質の高い教育」が重視される。この中には重要な要素として、未来を担う次世代育成、効果的な訓練・研修、そして採用政策への反映が含まれるべきだ。

今後SDGs経営が進展するなかで、SDGs経営企業では優秀な人材がモチベーションをあげ、結果定着率が高まる。そして、採用面でも優秀で志の高い人材が集まる。その方向でトップイニシアティブのもと、全社一丸となって、企業内の行動変革を進めていく。

SDGsには17のゴールが設定されているが、これだけで十分ではないかもしれない。

若者には、SDGsを自分ごと化するなかで、足りないと思ったら、自社に向いているルールを作るくらいの意気込みを持ってほしいと思う。「ルールを使う側から作る側にいく」というくらいのエネルギーを持つことで、SDGs経営にみがきがかかる。

サステナビリティ・マネジメント体系とPR

(2)目標4「質の高い教育」で五輪・万博のレガシー形成

1年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックにおいても、調達やイベント運営のルールにSDGsが明確に組み込まれている。また、2025年の万博を大阪に招致するにあたっても、SDGsが重要な要素として発信された。

これからの国際的なイベントはすべてSDGsでルール化されていくので、日本国民すべてが、SDGsを共通言語とし、しっかり自分で理解して、自分ごと化していく必要がある。私は、現在はそういう時期に入ったのではないかと思う。

こうしたなかで、「発信型三方良し」を実践する若い方たちが生まれることを期待したい。次世代のSDGsを非常に楽しみにしている。

今後「レガシー」形成につながる次世代育成は関係者の重要な役割である。

大阪・関西での2025年国際博覧会(万博)の開催が決定したが、2020年五輪・パラリンピックと並び、グローバル社会のなかで日本のサステナブルな価値観を示す絶好のチャンスだ。

2025年には「太陽の塔」の時代とは全く違う「SDGsレガシー」をつくる。SDGsの目標年次2030年に突き抜けていくチャンスの到来である。

(3)次々生まれる「SDGsプラットフォーム」

私としてもSDGsをさまざまなところで発信している。企業研究会では「笹谷塾」と銘打った年間講座も持っている(文末※参照)。SDGsを皆さまと深めていき、私自身もいずれ次世代版の新たな目標提案を日本発で行っていきたいと考えている。

各ステークホルダーの主導する活動の共通基盤(プラットフォーム)も数多くできている。活動の基盤のプラットフォームは、産業界、行政、教育の「産官学」だけではなく、金融界、労働界、メディアの「産官学金労言」、さらにNPO、NGOも加わる必要がある。この連携協働のスキームをつくっていくことが非常に大事だ。

企業の主導したものとしては、住友化学、伊藤園、パナソニック。行政主導型では大野市の水、下川町のバイオマス、北九州市の環境未来都市。高知県は伊藤園との間でSDGsを踏まえた地方創生包括協定を結んでいる特色ある事例だ。

大学では、東京大学が「地球人One Earth Guardians」という地球を守るための人材育成でSDGsに貢献する企画を発足させパートナーも募集している。2018年に創立90周年を迎えた千葉商科大学では、再生可能エネルギー100%大学(「RE100大学」)を宣言し、学長プロジェクトのSDGs特別サイトを作り、政府のSDGsアクションプラットフォームとリンクを張っている。

同大学の創設者の遠藤隆吉博士は高い倫理観を持つ「治道家」の育成を掲げている。「治道家」とは、今日的な意味ではSDGsに取り組み、エシカルでサステナブルで事業収益を追求する「高徳の実業人」を意味するとしている。大学発のSDGs先進事例となって「目標4 質の高い教育」や「目標11 持続可能なまちづくり」にも貢献していくことが期待される。

メディアは、この連載をはじめ、「日経ESGプロジェクト」、朝日新聞の未来メディアプロジェクトなどメディアらしい発信を強めている。

金融では、富山大学、魚津市に加え地元金融機関が連携する「魚津三太郎塾」で、SDGs「目標4 質の高い教育」と「目標9 産業創出」を絡めている。

SDGsのコミュニケーション「産官学労言」

以上のような連携構造をつくってPPAP、つまり政府の言う「Public Private Action for Partnership」をさらに深めていくべきだ。

SDGsの理解・実践・連携構築がますます重要となっている。

※「第2期 ESG/SDGs対応フォーラム(笹谷塾)」(一般社団法人企業研究会内)


この連載の前半4回では「SDGsをどう理解していくか」をテーマに、「概要と特色」「CSR・CSVとの関係」「ESG投資との関係」「パリ協定・脱炭素との関係」をテーマに解説してきました。

続く4回では、「取引先/サプライチェーン」「投資家/金融機関」「社内/インナー」「採用」(この記事です)と各ステークホルダーごとに、SDGsどう伝えるかについてその方法論を含めご紹介いたしました。

下記、「コミュニケーション戦略におけるSDGs バックナンバー」より、各記事を読むことができますので、ぜひ御覧ください。

次回は、いよいよ具体的な事例紹介にうつりたいと思います。SDGsの理解と実践に、お役立てください。

連載

  1. SDGsをどう理解するか 第1回(CSR・CSVとの整理)
  2. SDGsをどう理解するか第2回(ESG投資との整理)
  3. SDGsをどう理解するか 第3回(SDGsの概要と特色)
  4. SDGsをどう理解するか 第4回(パリ協定・脱炭素との整理)
  5. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第1回(取引先/サプライチェーン)
  6. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第2回(投資家/金融機関)
  7. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第3回(社内/インナー)
  8. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第4回 (採用)
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

株式会社伊藤園
顧問

東京大学法学部卒、1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、2010〜2014年取締役。2014〜2018年4月常務執行役員CSR推進部長、2018年5月より現職。2019年4月より社会情報大学院大学客員教授。

主な著書に、『CSR新時代の競争戦略 ― ISO26000活用術 ― 』(日本評論社、2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社、2015年)『経営に生かすSDGs講座─持続可能な経営のために─』(環境新聞ブックレットシリーズ14)新書(環境新聞社・2018年)など。

日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事、通訳案内士資格保有(仏語・英語)学校法人千葉学園評議員、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員(平成26年度より)を兼任。

関連記事「SDGs活用によるサステナブル経営
参考サイト「笹谷秀光公式サイト ― 発信型三方良し ―

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