Sustainable development goals

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事例紹介・グッドプラクティス(海外編:その2)

記事提供:環境ビジネス

伊藤園顧問の笹谷秀光氏による11回にわたる連載コラム「コミュニケーション戦略におけるSDGs」も、最終回となりました。今回は、前回に続き海外事例を取り上げたいと思います。

採択から4年が過ぎ、世界企業は、縦横無尽にSDGsを使いこなしています。こうした動きとともに、これから企業がSDGs取り組む際に参考とすべき世界の情報のありかなどについてもご紹介し、本連載を締めくくりたいと思います。

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国際的な指針は、グローバル企業がけん引

国内外の企業によるSDGsの取り組みが注目されているが、SDGs採択とほぼ同時に、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、GRI(Global Reporting Initiative)および持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)により『SDG Compass:SDGsの企業行動指針―SDGsを企業はどう活用するか―』が発表された(日本語版は2016年3月に公表)。

この内容を見ると、従来の社会・環境に関する国際的手引とは異なり、「企業がSDGsを企業経営に組み込むことのメリット」がステップごとに明示され、共有価値の創造(CSV)色の強い内容である。これは、グローバル企業が指針の作成などをけん引しているからである。

さらには、産業別にSDGsの取り組み事例を整理した『SDG Industry Matrix』も16年に発表された(UNGCがKPMGと共同で作成)。これはいわばSDGs優良事例集で、産業・テーマ別に作成されている(GCNJとKPMGあずさサステナビリティによる日本語版も発表)。

この事例集を見ると、日本企業のプレゼンスが著しく低い一方、策定段階から関与したグローバル企業の事例がぎっしり詰まっている。

前回紹介したエリクソンのように17目標すべてについて社内の責任体制を示している企業もあるが、17目標のうち重点を定めて発信している世界企業もある。

特に、ユニリーバは、ほとんどの目標を実行しているが、特に目標17のパートナーシップをフラッグシップとして、すべての関係者にユニリーバとの協働を呼び掛けている

世界企業はSDGsを縦横無尽に使いこなしている

世界企業によるレポーティングも年々充実している。その動きを見るために、世界中の非財務情報のレポートデータベースを公開している『Corporate Register(コーポレート・レジスター)』による表彰事例を見てみよう。

優れた企業の非財務情報のレポートを表彰する「The CR Reporting Awards 2018」が2018年5月に公表された。この表彰は、コーポレート・レジスターの登録ユーザー約6万人の投票によるもので、現在2019年の投票中である。

 過去の主な受賞企業は、次のとおりである。

CRRA 2018 AWARD WINNERS

【Best Report】

Marks and Spencer plc
「Plan A Report 2017. Plan A because there is no Plan B」

【Best integrated report】

Vancouver City Savings Credit Union (Vancity)
「Annual Report Vancity in 2016: building on our values」

【Best Carbon Disclosure】

Novo Nordisk A/S
「Annual Report 2016」

【Creativity in Communications】

Domtar Corporation
「2017 Sustainability Report」

「Best Report」のマーク&スペンサーのレポートでは、サプライチェーンの取り組みについてKPIの数値が多く説得性が高い。また、すべてのKPIに「達成」「進行中」「遅れている」「未達成」の4段階で進捗状況を明確に示している。また、SDGsとの関連付けも示している。

SDGsとの関連付けで参考になるのは、ネスレの「Creating Shared Value and meeting our commitments 2018」である。活動紹介のページでSDGsの各ゴールが紐づけられており、重要事項との関連付けについてはSDGs関連性マトリックス(Materiality and the Sustainable Development Goals)にジャンプさせる設計となっている。SDGs関連性マトリックスの縦軸では「人間(個人と家族)」「コミュニティ」「地球」の3項目にくくって活動内容を整理し、横軸には17目標を並べてマッピングしている。

Novo Nordisk A/S はSDGsとの関連では、Washington and Lee 大学の大学生と共同作成した、SDGsの相互関連がわかる双方向ツール(the interactive chart)を提示しており興味深い。

今企業がすべきこととは? 「協創力」でSDGs先進国へ

Unileverの価値創造モデルも極めて興味深い。

これらの事例を見ると、世界企業がSDGsを縦横無尽に使いこなしているのがわかるであろう。

政府の「SDGsアクションプラン2019」では日本の「SDGsモデル」の世界への発信がうたわれている。世界への発信となると、SDGsやCSR、CSV、ESGなどの非財務情報に関連する海外発の概念をよく整理する必要がある。すべて持続可能性を目的とするが、パリ協定やSDGsが社会・環境課題として取り組むべき内容を示す。

・活動指針を決めているのは、CSRに関するISO26000やグローバル・コンパクトで、今回SDGコンパスが加わった

・開示に関しては、ESGの開示などを『GRI(Global Reporting Initiative)』『IIRC(International Integrated Reporting Council)』が推進している

最近はこれらに企業の競争戦略としてのCSVの要素が全面的に入ってきている。

日本企業も、今からでも遅くないので早急に取り組むべきだ。

さまざまな国際ルールや考え方

SDGsと他の概念との関連についての詳細は、 笹谷秀光公式サイト ー 発信型三方よしをご参照いただきたい。

 


 

SDGsをどう理解するかについては、こちらから。

各ステークホルダーとのコミュニケーション戦略については、こちらから。

連載

  1. SDGsをどう理解するか 第1回(CSR・CSVとの整理)
  2. SDGsをどう理解するか第2回(ESG投資との整理)
  3. SDGsをどう理解するか 第3回(SDGsの概要と特色)
  4. SDGsをどう理解するか 第4回(パリ協定・脱炭素との整理)
  5. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第1回(取引先/サプライチェーン)
  6. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第2回(投資家/金融機関)
  7. ステークホルダーへSDGsをどう伝えるか 第3回(社内/インナー)
  8. 事例紹介・グッドプラクティス(国内編)
  9. 事例紹介・グッドプラクティス(海外編:その1)
  10. 事例紹介・グッドプラクティス(海外編:その2)
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)

社会情報大学院大学客員教授
株式会社伊藤園 元取締役

東京大学法学部卒、1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、取締役、常務執行役員CSR推進部長等を経て2019年4月末退職。2019年4月より社会情報大学院大学客員教授。 主な著書に、『CSR新時代の競争戦略 ― ISO26000活用術 ― 』(日本評論社、2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社、2015年)、『経営に生かすSDGs講座─持続可能な経営のために─』(環境新聞ブックレットシリーズ14)新書(環境新聞社・2018年)、共著『SDGsの基礎』(事業構想大学院大学出版部、2018年)など。

現在、日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事、学校法人千葉学園評議員、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員(平成26年度より)を兼任。通訳案内士資格保有(仏語・英語)。

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