SDGs、ESG投資を経営の中枢に
限りある経営資源を、どう割り当てるか
伊藤氏は、SDGs経営の実践における今後の課題を、『限りある経営資源をどう振り分けるか』だと指摘する。
「たとえば10億円の財務資源があったとき、どの事業にどう使うのか。どれだけのリソースをSDGsに回すのか。これは相当に知恵を絞る必要があります。SDGs、ESGに該当するだけではだめで、中期、長期かかるにしても、収益性に結びついていなければ持続していきません」
17項目あるからと、あまりに総花的な取り組みになれば、成果は出ない。取り組んではいるが、その成果が何で、どのようなかたちで会社に貢献したのか、アウトカムが説明できない事業は要注意といえるが、では何をアウトカムとするかは実践を通して探っていかなくてはならないと伊藤氏はいう。
「金銭的なリターンと社会的インパクト、これはある意味二項対立ですが、そこを乗り越えなければなりません。かつてはSDGs、ESGといわなくても、投資家や金融機関は資金を出してくれた。しかし、インベストメントチェーンに〈社会〉が加わり、投資家の判断基準も変わってきています。そうした変化を把握し、企業経営に生かしていく必要があります」
たとえば、製薬会社が薬を開発するとき、疾患の治癒に貢献するといっても、対象を罹患者の多い疾患か、それとも稀少疾患、どちらにリソースを振り向けるのか。かかわるステークホルダーは多岐にわたるため、社会貢献を標榜しても、細部に入るほど意志決定は難しくなっていく。
「この部分にガバナンス、ある種の規律がなければ、慈善事業で終わってしまう恐れがあります」
ESG投資家が増えつつあるなかで企業としては緊張感を持ってSGDs、ESGに取り組んでいく必要がある。財務業績だけでは株価が決まらなくなってきた現代、コントロールしなければならない要素がさまざまに出てきたなかで、どこにリソースを注いで実績を出せば、長期投資家を掴むことができるのか。
「日本企業は今、SDGsやESGといった、これまで日本で顧みられてこなかった発想に向き合うことに力を入れています。次のフェーズでは、経営の時間軸の中で、限りあるリソースを17の項目のどこにどう割り当てていくのかが問われます。さらに、投資家や顧客など社会に存在するステークホルダーにその判断をいかに伝え、相互に理解をする、対話力が問われることになります」
企業にとってESG・SDGsという新たな視点からの...(全文は本誌をご覧ください)
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新たな事業と人材が、持続可能な未来を拓く
SDGs経営 Vol.2 ムーンショット&バックキャスティング 新時代を拓く構想力
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