Sustainable development goals

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鼎談 ― 政財界トップに聞く 日本発SDGs実践に向けた取り組みとは(前編)

記事提供:環境ビジネス

日本の国家戦略としても位置付けられ、実装・達成への取り組みが進むSDGs(持続可能な開発目標)。2019年6月のG20大阪サミットを皮切りに、横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪・関西万博と、国際的な大イベントを控え世界の注目が集まるなか、日本発のSDGsをいかに構築し、世界へ発信していくのか。政界、産業界、地域経済界から環境大臣・原田 義昭氏、サントリーホールディングス副会長・鳥井 信吾氏、大阪青年会議所理事長・小嶋 隆文氏の3氏にお集まりいただき、大いに語っていただいた。

環境政策が成長を牽引する時代に

―2019年は、6月にG20大阪サミット、8月に横浜でTICAD7が開催され、9月には国連総会で初のSDGs首脳級会合が行われます。日本のSDGsに対する取り組みを世界へ発信する絶好の機会となりますが、行政・産業界・地域経済界、それぞれの視点から、SDGsをどのように捉えていらっしゃいますか。

原田氏 2018年は『平成30年7月豪雨』をはじめ、記録的な猛暑、さらには北海道の大地震と、甚大な自然災害に見舞われました。こうした異常気象、それに伴う災害に気候変動が影響しているということは今や通説となっています。環境政策の一番のテーゼは、環境と人を守ること。安倍総理からは「環境大臣として『地球と人類を守る』くらいの意気込みで仕事をしてほしい」という言葉もいただいています。

2015年に国連で採択されたSDGsでは、すべての国が目指すべき17のゴールと169のターゲットが明確に示されました。世の中を脱炭素型、かつ持続可能なかたちへと転換していくことでさまざまなイノベーションを起こし、新たなマーケットを創出する。環境政策が、これからの成長の牽引役となっていくことが重要だと考えています。

原田 義昭氏
環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災)
1968年東京大学法学部卒業。同年に新日本製鐵(八幡)入社。1970年に通産省入省、中小企業庁参事官を務める。1990年に衆議院議員となり、以降、厚生政務次官、文部科学副大臣、衆議院外務委員会委員長、衆議院財務金融委員会委員長、自民党競争政策(独禁法)調査会会長・国際情報検討委員会委員長、衆議院予算委員会常任理事等、衆議院消費者問題特別委員会委員長の要職を多数歴任。2018年より、第4次安倍改造内閣にて環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災)を務める。

鳥井氏 今年6月にG20が大阪で開催されます。世界の首脳が集まるなかで、安倍首相や原田大臣がSDGsや環境について発信される。こうしたSDGs、環境の問題を大阪から発信できることは、大阪にとっては大きなインパクトになると思っています。

サントリーの創業者である鳥井信治郎は起業者精神にあふれていましたが、同時にSDGs的な考え方をごく自然に持っていました。彼は『やってみなはれ』という前向きなチャレンジ精神と同時に『天地の報恩』を説いており、サントリーの事業は『天と地の恩に報いるもの』といい続けました。こうした社会的な視点というのは、三方よしや松下幸之助さんがいう企業は天下の公器のように大阪の町人文化、企業文化のなかに深く根付いてきたものだと感じます。

また、現代のように複雑化した社会では、単一の事業だけではビジネスができなくなってきています。さまざまな事業が複雑に絡み合っていますので、SDGs的な広い視野で経営をしていくことが、産業界においても重要だと感じます。

鳥井 信吾氏
サントリーホールディングス 代表取締役副会長
1975年甲南大学理学部卒業、南カリフォルニア大学大学院修了(M.S.〔微生物遺伝学〕)。伊藤忠商事を経て、1983年サントリー入社。1992年に同社 取締役、2002年に同社 代表取締役副社長、生産研究部門担当、マスターブレンダー(現任)就任。2014年にサントリーホールディングス 代表取締役副会長に就任、現在に至る。2012年5月~2014年5月まで一般社団法人関西経済同友会 代表幹事、2014年7月より大阪商工会議所 副会頭(現任)。

小嶋氏 全国には694の青年会議所(JC)がありますが、そこで行われている各地域でのさまざまな活動を試算すると、約2,000の事業がすでにSDGsに関連したものになっており、経済規模でいえば20億円ほどの事業になっています。それらの事業が、SDGsが浸透することでより際立つ。今年度の大阪JCのテーマは、「善が循環する国際都市大阪の実現─他に善かれかしの精神で世界を変える─」であり、これはSDGsの考えそのものだと思っています。2019年は、大阪はもとより、日本で一番SDGsを推進する青年団体になろうと動き始めています。

小嶋 隆文氏
一般社団法人大阪青年会議所 第69代理事長
1981年、大阪府箕面市生まれ。2006年ロンドン大学SOASカレッジ卒業。同年、宗教法人勝尾寺入寺。2012年に社団法人大阪青年会議所に入会、以降、2017年常任理事・都市創力融合室室長、日本JC総務委員会委員長、2018年に副理事長、JCI(国際青年会議所)副会頭ヨーロッパ担当を務めた後、2019年より一般社団法人大阪青年会議所第69代理事長に就任。

原田氏 私たちの環境政策の中心こそSDGsで、それをどう実践し、具現化して国民に知らせようかと考えたとき、日本の若手経済人の存在は大きいと感じます。

私どもは、積極的に政策は展開しますが、具現化するには、研究者や政治家はもとより、現実に事業を実践している産業界の力が非常に重要となります。

JCの理念は、ある意味SDGsそのものではないかと考えています。JCをはじめとした若い世代とSDGsとの親和性は非常に高いと感じます。

環境と経済成長の好循環を生み出す

―サントリーは、『水と生きる』企業としてさまざまな活動を行っています。SDGsに対しても積極的ですが、企業として取り組む思いをお聞かせください。

サントリー従業員による枝打ち体験の様子

鳥取県奥大山にある「天然水の森」での調査。地元大学の研究者や環境コンサルティング企業とともに調査を行う

山梨県南アルプスの「天然水の森」での調査

鳥井氏 サントリーの製品は、大麦、ブドウ、コーヒー豆…、すべて植物と水など自然の恵みからつくられます。自然がなければ事業を続けていくことができないくらい、自然と密接にかかわっている会社なのです。ですから、「自然を大切にしていこう」ということが事業活動の根本にあります。

『水と生きる』に関していえば、2003年から『サントリー天然水の森』という活動をしています。日本には清らかな地下水に恵まれた場所が多くありますが、森が元気をなくしてしまえば、その水も美しさを失い、涸れてしまいます。

サントリーは、『水と生きる』会社として、「工場で汲み上げる地下水より多くの水を生み出す森を育む」と約束しました。全国にあるサントリーの工場で使用する地下水の水源にあたる森を、手入れして元気にしていく、これが『天然水の森』の取り組みです。現在、全国20ヵ所、約9,000ヘクタールの森で活動しています。

ひとつひとつの森に入り、地元の森林組合や大学の先生などと協力して調査を行い、森の保全に努めています。元気な森は土壌が豊かで、生態系が多様です。いろいろな植物が生えていて、いろいろな動物、昆虫、土壌のなかの微生物がいて初めて、森は強くなります。森が強くなることで、森のなかに水が保全される。すなわち緑のダムができる。

―日本企業の技術力による環境課題の解決には大きな期待が寄せられています。この機会に、日本の環境技術とともに、フィロソフィーも世界に発信していくことが重要ですね。

鳥井氏 サントリーでは現在、『天然水の森』活動も含め、環境技術のノウハウを海外へ移転しようとしています。ベトナム、インドネシア、アメリカ、フランス…まだまだ取り組みは始まったばかりですが、水の保全も含め、グローバルな展開を目指しています。

原田氏 環境政策や環境対策は、企業にとってコストだという時代がありました。ですが、いま、私たちが政策の中心にしているのは〈環境と経済成長の好循環〉です。

投資や融資において、環境への取り組みを重視するESG投資という言葉が耳になじむようになってきました。この5年ほど、環境対策を積極的に行うことが企業イメージを上げ、イノベーションを起こし、企業の競争力を高めることにつながるといった考え方が一般的になってきました。

環境政策と企業成長に親和性が生まれたという意味では、世の中が大きく変わってきた。企業経営や経済全体にとって、環境政策が非常に重要になってきたと感じます。

聞き手・谷口 優(社会情報大学院大学 准教授/『宣伝会議』編集長)

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