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SDGs考察 若者研究マーケッターが語る、いまどきの若者の価値観とは

記事提供:環境ビジネス

「最近の若い人はわからない…」。いつの時代も聞かれる言葉であるが、2030年、SDGsの目標年に社会の中心となっているであろう今の若者たちはどのような価値観を持っているのだろうか?これからの社会を担う若者を知ることで、SDGsを少し違った角度から見られるのではないだろうか。1985年以降に生まれた若者を「つくし世代」と命名した藤本 耕平氏に伺った。

個性尊重教育とデジタル社会が生んだ「つくし世代」

藤本氏のいう「つくし世代」とは、1985年以降に生まれ、特に1992年以降に小学校に入学した若者を指す。ここに境ができるのは「学校教育が転換し、『個性尊重教育』で育ったため」だと藤本氏はいう。

「以前は、マイカー・マイホームを持って一人前、結婚をして子ども育てるべき、などの常識があり、よりよい『箱』にいち早く入り込めば勝ち組み、『箱』を逃すと負け組という概念がありました。しかし、個性尊重教育を受けたつくし世代には、『好きなことや幸せだと感じることは人それぞれ違って当然』という概念が浸透しています」

また、つくし世代はデジタルネイティブ世代でもある。情報入手のチャンネルが多様化し、膨大な情報が溢れる環境で育った彼らは、情報を『探す・選ぶ』能力に長けている。

こうした背景が、彼らならではの価値観を形成している。たとえば人間関係では、「誰と付き合うか」「そのコミュニティにいる意味は何か」など合理的に考える傾向がある一方で、皆との『和』を大切にする特徴があるという。

物事はすべて「自分ものさし」でみる

つくし世代が持つさまざまな価値観の根っこには、「自分はどう思うか」という判断基準がある。藤本氏はそれを「自分ものさし」と表現する。

「昔は情報源が限られていたので、『将来幸せになるためにはいい会社に入らないといけない、そのためには勉強をしないといけない』と先生にいわれたら、それだけをみて頑張りました。でも今はネットがある。調べればたくさんの情報・さまざまな価値観に触れられるので、先生の言葉は「one of them」だと気づき、そのうえで判断する。彼らにとっては自分なりに考え選択するのが当たり前なのです」

「自分ものさし」は、上の世代とのギャップを生む原因にもなり得る。

「『会社ってこうだから』『皆そうなんだから』、といっても若い人たちには通じない、と感じる上の世代の方は多いでしょう。しかし、自分ものさしでみたときに納得できる理由まで伝えられていないから動かないだけなのです」と説明する。

若い世代にこういった考え方が急速に強まった背景には、2014年ごろから教育現場で注目され取り入れられたアクティブラーニングの影響がある。生徒の能動的な学びを促すこの手法は、ゆとり教育導入当初は教える側に蓄積がなかったために狙い通りにはいかず『失敗』ととられたが、藤本氏は「効果的な手法が教育現場に浸透してきて、今になってその効果が出つつあると感じています」と話す。

「尽くす」ことが消費意欲になる

藤本氏はつくし世代の「つくし」に「尽くし」の漢字を当てている。彼らの消費行動にそれは強く表れているという。特に1992年以降生まれの『つくし第二世代』は、ダウンロードコンテンツが普及したなかで育ったため、ものを持たない傾向が強い。しかし消費をしないわけではない。

「『ギブすることでテイクできる消費』は進んでします。LINEスタンプのプレゼントやパッケージにメッセージを書き込めるお菓子が人気なのは、自分のための消費ではないけれど、自分と相手のちょっとした喜びにつながるためです」

また彼らは、他者と『場』を共有できる消費には価値を感じやすい。

「彼らは、他者とのつながりは自分からつくり出さないと自分の人生が楽しくなくなってしまうことをわかっています。こうした意味で、自分の満足だけで完結させず、他者とのつながりを大切にするのです」

「自分ものさし」でみた「他者とのつながり」は、「自分は何がしたいのか」にも及ぶ。今は昔と違い、地元志向が強まっている。これは自分にとって必要なつながりを考えたとき、「都会」や「海外」に必要性を感じない若者が増えたためだと藤本氏は考える。一方で、自己実現や理想とする社会の実現のために、自分とつながっていない他者に対しても尽くす若者も、もちろん存在する。

そしてこの価値観は、彼らの社会貢献の捉え方にも影響している。ボランティアをする理由を問うと、「社会のためになるから」ではなく、「感謝されると嬉しい」という理由がつくし世代に限ってはトップに挙がる。彼らは「自分が犠牲になる」ことは避け、自分にとってのメリット、実感があるかを重視するのだ。

『世代間ギャップ』は埋めなくていい


『世代間ギャップこそがダイバーシティ』

藤本 耕平氏
『つくし世代』著者、若者研究マーケッター

1980年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業。2002年に株式会社アサツー・ディ・ケイ(ADK)入社、入社時からマーケティング業務に従事。トイレタリー・化粧品・スポーツ・金融・飲料業界などジャンルを問わずさまざまな企業のコミュニケーション戦略、商品開発などに携わる。2010年より若者研究を開始し、ADK若者プロジェクトリーダーを務める。2012年に情報感度の高い学生メンバーで構成する若者マーケッター集団「ワカスタ(若者スタジオ)」を創設。学生と共同で若者向けの商品開発やキャンペーン開発などを行う。外部セミナーの講演や新聞・雑誌記事連載、大学客員講師などの活動もおこなっている。カンヌ国際広告祭2010、スパイクスアジア広告祭2011などでの受賞歴あり。2015年に1985年以降生まれの若者を分析した『つくし世代』(光文社新書)を上梓。

SDGsの達成に向けては、目標に向かい世代や国を超えた取り組みが欠かせない。藤本氏は「つくし世代は『ゴール』に向かう努力を好みます。よい人材がいるはずです」と期待を寄せる。

「自分のやりたいことをやるけれど、和は乱さないという器用な世代です。だからさまざまな人が集まっても、軋轢は少ないでしょう。また、人それぞれ価値観が違うという前提で物事をみているので、押し付けや過剰な踏み込みはせず、相手をリスペクトできるのが彼らの強みです」

とはいえ、上の世代は世代間ギャップを埋めておきたいと思うものだ。これに対し藤本氏は「その差こそがダイバーシティ」と話す。

「若い世代は、上の世代と違ったよさを持っています。違いをポジティブに捉えるのが生産的だし、若い世代を『巻き込む』『ギャップを埋める』とは考えない方がよいでしょう。大切にすべきは『ゴール設定』です。バラバラな価値観もひとつの場所に向かっていくはずです」

SDGsは世代を超えてつながるツールにもなっていくだろう。

 

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