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新型コロナ×気候変動対策へ向けた「再設計」を議論 閣僚級ウェブ会合を総括

記事提供:環境ビジネス

COP26に向けてすべての参加国が、新型コロナウイルスからの経済復興に関連する気候アクションと環境保全の状況・見解を共有する「オンライン・プラットフォーム」の閣僚級オンライン会合が、9月3日、日本と気候変動枠組条約事務局の共催で実施された。閣僚級会合への参加、ウェブでのメッセージ・情報提供など、最終的な参加国は同日時点で計96か国にのぼり、38の非国家主体が参加した。

セッション1:パネルディスカッション「社会経済のリデザイン(再設計)と三つの移行」

「国際的な連帯を強め、気候変動対策の機運を高める」

同閣僚級会合は、各国における新型コロナ対策と気候変動・環境対策に関する具体的な行動や知見を共有すること、コロナ禍においても気候変動対策が後退しないよう、世界の機運を高めていくことを目的として開催された。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のパトリシア・エスピノーザ国連事務局長からの支援とともに、小泉進次郎環境大臣が議長を務めた。

会合の冒頭、日本の安倍晋三総理大臣と、国連のアントニオ・グテーレス事務総長から寄せられたビデオメッセージが公表された。

安倍総理は「人類はこれまでも感染症をはじめ様々な困難に直面しながら、そのたびに連帯し、イノベーションの力によってそれらを乗り越えてきた。気候変動という人類共通の課題もまた、私たちが手を携えることで必ずや乗り越えることができると確信している。日本はこの分野で最先端のイノベーションを生み出し世界の取り組みに貢献していくと決意している」と表明。

また、「パリ協定のもとで国際協調を進め、あらゆるリソースを総動員し、イノベーションを追求することで脱炭素社会を実現する-日本のこの決意は決して揺らぐことはない。その先の『ビヨンドゼロ』を目指していく」として、ゼロエミッション国際共同研究拠点の活動などについて紹介した。

グテーレス事務総長は「気候変動に向けた勢いが世界的に高まっているのは、クリーンエネルギーがより多くの雇用を生み、大気を浄化し、健康を増進し、経済成長を強化することを各地のリーダーが認識しつつあるからだ」と説明。「パリ協定の目標を達成するためには世界の温室効果ガス排出量を2030年までに半減させ、2050年までに全世界でカーボンニュートラルを達成しなければならない。これらの目標は達成可能ではあるものの、現時点でその目途は立っていない。各国、G20メンバーに対し2050年までにカーボンニュートラルを達成することを約束するよう、強く訴える」と述べた。

さらに「COP26までに地球温暖化を1.5℃に抑えるという目標を踏まえつつ、さらに野心的なNDC(自国が決定する貢献)と長期的戦略を提出することも各国に要請する。新型コロナと気候変動という2つの重大危機に直面している。この両方に取り組むことで、将来の世代に対し、地球にとって真の転換点であるという希望を与えようではないか。行動を鼓舞できる実りある話し合いになることを期待している」と話した。

同会合では開会合では46人の大臣・副大臣から発言があったほか、のべ91カ国から取り組みの具体案の共有や、ビデオメッセージの提供があった。環境省によると、気候変動関連のオンライン国際会議としては世界最大規模の会議となった。小泉進次郎環境大臣は9月4日の会見で、「COP26が延期された中、各国の閣僚級が新型コロナウイルスと気候変動という2つの危機に立ち向かう意志と具体的な行動を共有して発信したことで、国際的な連帯を強め、気候変動対策の機運を高めることに貢献するという、この会合の目的を達成することができたと考えている」と話した。

セッション1では各界の有識者による「3つの移行」をテーマにしたパネルディスカッション、セッション2では、閣僚級ラウンドテーブルで、具体的な取組や知見の共有、セッション3では、若者、産業界、自治体の代表によるパネルディスカッションが行われ、小泉大臣は会議の議長として、全体の統括を行った。

主な会合の成果などをまとめた議長サマリー概要は以下の通り。

リデザイン(再設計)と3つの移行

COVID-19が人の健康・経済社会にもたらした影響は大きく、我々は時代の大きな転換点に立っている。持続可能で強靱な社会経済システムへの変革を実現するためには、COVID-19 前の社会に単に戻すのではなく、持続可能でレジリエントな社会経済へのリデザイン(再設計)が必要である。

このリデザイン(再設計)は3つの移行、すなわち「脱炭素社会」への移行、「循環経済」への移行、「分散型社会」への移行を基軸とする必要がある。

「脱炭素社会」への移行

COVID-19からの回復期においてエネルギー需要の増大が見込まれるが、リーマンショック後の対策と同じ轍(排出量の増加)を踏まないためにも、再生可能エネルギーの活用の拡大や水素の社会実装等によるエネルギー分野の脱炭素、工業・家庭分野のエネルギー消費プロセスにおける脱炭素が喫緊の課題である。

「循環経済」への移行

また、経済復興と気候変動対策/環境保全施策をともに進め、環境と成長の好循環をもたらすことが重要である。このためには、廃棄物の循環利用・適正処理に加え、サプライチェーン全体として、企業によるビジネス戦略としての資源循環の取組の加速化による資源生産性の向上や、自然資源の持続可能な利用などを含む、循環経済への移行に向けた、様々な社会経済システムの変革が必要である。

「分散型社会」への移行

COVID-19の蔓延は、一極集中型の社会の限界もあらわにした面がある。感染症対策という視点でも、またテレワーク等の働き方や生活様式の変化、デジタル化、自立分散型エネルギーの導入やコミュニティの参加を含め、社会経済システムを再構築し、分散型社会の構築を推し進めることが重要である。

セクター・課題ごとの対策と、対策のために必要な横断的事項

COVID-19からの回復を意識したNDCの通報・更新や、2050年までの脱炭素社会を目指す重要性が言及された。

気候アクションの強化、再生可能エネルギーのさらなる活用や水素の社会実装の推進等のエネルギー対策、交通網の整備や電動化による運輸交通対策、省エネ技術を活用した建築や都市計画、持続可能なインフラ・水/防災・生物多様性等における適応策、これらに必要な経済対策といった、各セクター・課題ごとに求められる施策の内容について意見交換・集約を行った。

多くの参加者が、コロナ禍からの回復と気候変動への対応を同時に達成することの重要性に言及した。横断的事項として、政府・非国家主体(企業、自治体、市民社会、若者等)に求められる役割、科学に基づく政策決定の重要性や、各種戦略文書策定の必要性を確認した。また、気候変動の課題を解決するために、イノベーションが重要な役割を果たすことに多くの国が言及した。

多様な主体による、意思、行動、国際的な連帯

全世界に包括的な参加を求め、国・非政府主体等が参画した(計134。9月3日現在)。二つの危機に立ち向かう意思と具体的な行動を共有し、国際的な連帯を強め、気候変動対策の機運を高める必要性を認識した。

オンライン・プラットフォームに期待される役割

リデザイン(再設計)というコンセプトを打ち出した同プラットフォームが、COP26の成功に向けて、コロナ禍にあっても機運を維持し、議論を深める重要な場として大きな役割を果たしたことが支持された。また、本会合の成果を、COP26を含め、今後のさまざまな国際会議で発信する必要性が共有された。加えて、プラットフォーム・ウェブサイトを、各国・非国家主体から、COVID-19からの復興と気候変動・環境に関連する幅広い情報、経験、取組を集積し、発信する場として継続的に活用していくことに多くの期待が寄せられた。

【参考】

記事の公開期限:2020年11月01日

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