Sustainable development goals

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SDGs活用によるサステナブル経営

これまで2回にわたりSDGsとその企業経営への活かし方を紹介してきたが、「やはり、SDGsはわからない」「自社との関係が見えない」と捉えられることも多いだろう。株式会社伊藤園顧問 笹谷秀光氏は「SDGs理解のヒントは身近に様々なものがある」と述べる。

「モンサンミッシェル」はS(サステナビリティ)の好例

SDGs(持続可能な開発目標)すなわち「サステナビリティ」を示す好例として、世界遺産のモンサンミッシェルがある。フランス・ノルマンディー地方の潮の満ち引きが激しい湾内の孤島にある修道院で、かつては観光客向けに陸と島をつなぐ道路が設けられていたが、景観保全と生態系保護のために、2014年潮流に影響を与えにくい橋が架けられ、電気シャトルバスも整備された(写真1)。

写真1

写真提供:笹谷秀光氏

その整備には莫大な投資額を要したが、島内には巡礼者に伝統的に振舞われてきた名物料理や土産品も豊富にあり、そこからの収益額は大きなものである。笹谷氏は「これこそが、サステナビリティ」と述べる。「高価でもオリジナリティあるものには観光客は支出を惜しまない。そこからの税収などが、景観や生物多様性を守るなどの費用の捻出にもつながっていく」(笹谷氏)のだ。

島内には、年間300万人の観光客に耐えうるネットワーク環境も整備されており、上記のシャトルバスなどとも併せ「伝統的な石造りの街に最先端技術が入るつくり」(笹谷氏)で、観光客への利便性も考慮されている。最新技術を活用し、伝統・歴史と環境を守ることと観光促進を成り立たせ、それを未来へ残していく。まさに、「社会」「経済」「環境」課題の同時解決をどう具現化するかという、モデルケースとなっているのだ。

日本にもあるSDGs 「売り手よし、買い手よし、世間よし」

一方、笹谷氏は「SDGsと同じ仕組みは、古くから日本の企業や組織にもある」とも述べ、「三方よし」の理念を挙げる。これは、日本のビジネスの基礎を作ったともいわれる「近江商人」の行動哲学。「売り手よし・買い手よし・世間よし」の思想で、自分たちの利益のみを追求していないのが特徴で、「SDGsの心」ともいえる。

しかし、この三方よしは「陰徳善事(良いことは隠れて行う)」の行動理念とセットでもある。そこで笹谷氏は、開示や説明責任が求められる現代型に併せた形として、「発信型三方よし」を提案する。こうした「日本の身近なSDGs」は、ゴール17「パートナーシップで解決しよう」も同様だ。「岐阜県白川郷の合掌造りで、茅葺屋根を維持するための仕組みである“結(ゆい)”に代表されるように、“協働”の仕組みは、昔から日本各地にある。日本の良い伝統をSDGsと絡め、発信していくことが大切」(笹谷氏)なのだ。

「5つのP」で構造理解を

また、笹谷氏はSDGs活用のヒントとして「高度で細かな言葉の定義や解釈も大事だが、“SDGsの心”を掴んでほしい」(笹谷氏)と述べ、17のゴールを整理するために「5つのP」という考え方を示す(図1)。このPは「人類・人間生活(People)」「繁栄(Prosperity)」「地球環境(Planet)」「平和(Peace)」「協働(Partnership)」の5つのカテゴリ-の頭文字をとっており、SDGsの17のゴールが、この枠に収まるというもの。1~6は「人類・人間生活」、7~11は「繁栄」、12~15は「地球環境」と紐づけされ、その全ての基盤となるのが16「平和」で、解決手段として挙げられているのが17「協働」というわけだ。笹谷氏は、企業内でのSDGs実践に欠かせない、全社的な幅広い理解を進めるために、「外務省のホームページに掲載された“持続可能な開発のための2030アジェンダ”だけでなく、こうした概略図なども活用して企業内での理解を進めて欲しい」と提案する。

図1

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SDGsの流れに乗り遅れるな

SDGsの流れは、確実に日本に広がってきている。大企業や上場企業では、2017年にSDGsを柱に改定された「経団連企業行動憲章」やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針などから「サステナビリティ」が規範として適用されつつあるのが見て取れ、「SDGsは、IRマターから経営マターになっている」(笹谷氏)。

そして、この動きは一部企業の話ではく、今後、サプライチェーン全体に波及する可能性が高い。「非上場企業でも、取引先企業の行動が変わることで取引機会のロスに繋がる可能性もある」(笹谷氏)からだ。

東京オリンピック・パラリンピックには調達コードにSDGsが明確に盛り込まれており、2025年開催へ向け誘致活動を進める「大阪万博」でも、SDGsの達成が明確に掲げられている。笹谷氏は現状について、上記の機会ロスだけでなく「SDGs達成に向けた流れの中で、自分たちに何ができるか、何をすべきかつかむのに絶好のタイミング」(笹谷氏)とも述べる。そして「我々が“SDGsに足りない18番目のゴールをつくる”くらいの気概を持ち、産業界をあげ日本でSDGsを進めていくことが必要」と今後の期待を語った。

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