Sustainable development goals

ニュース・コラム

マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs

SDGsには17のゴールがあるが、その中でも特徴的で重要度が高い項目がある。ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」だ。第1部の講演ダイジェストでも触れたように、SDGsの各ゴールはいずれも企業にビジネスチャンスをもたらすが、ゴール17は「分野的横断なテーマ」で、企業がSDGsへどう取り組むかが示されているためだ。

 

「パートナーシップ」とは古くて新しい考え方

ゴール17は、ゴール1から16までを達成するための「実施手段の強化」と「パートナーシップの活性化」に向けた目標を掲げている。

この「パートナーシップ」すなわち「協働」は昔からある言葉だが、これについて、東京都市大学環境学部教授 佐藤真久氏は「古くて新しいパートナーシップ」という捉え方を提言する。「例えば、共催、後援、実行委員会、戦略協働、政策協働ーこういった言葉は、新しいパートナーシップといえる」(佐藤氏)。

なぜ、今この「パートナーシップ」が注目されているのか。それは、「社会の問題がグローバル化・複雑化しており、個々の問題に個別に対応していてはその解決が難しい」(佐藤氏)ためだ(図1)。

問題群としての地球環境問題

図1

「女性の識字率向上」という問題を例に挙げると、従来は教育という枠組みのみで考えられがちだったが、女性への教育で識字率が向上しただけでは問題の根本解決には至らない。その先の、教育を受けた女性の社会への受け入れが必要で、「企業の現場」「支えるコミュニティ」「必要な政策」が不可欠なのだ。つまり、「社会問題“群”はシステムから生じているのであって、システム、いいかえれば“仕組み”で解決しなければならない」(佐藤氏)。こうしたことから、SDGsでは「新しいパートナーシップ」、すなわち「多様なステークホルダーと手を組むこと」(佐藤氏)が求められているのだ。

SDGsパートナーシップ事例「文京区こども宅食プロジェクト」

この「新たなパートナーシップ」で、企業に求められるものは何か。それは、企業と企業が手を組むことだけでなく、「企業とNPO」「企業と行政」など多様な協働で新しいビジネスの在り方をつくりあげることだ。

ここで佐藤氏は、「受援力」という考え方を提言する。これは「自分たちができないことを相手に伝え、相手の力をもらうこと」(佐藤氏)を意味する。「自分たちはこれができる」という提案だけでなく相手の強みをより活かす重要性を示しており、「利益性・公正性・当事者性と取り組む目的は違うものの、同じビジョンを共有し、“何をするか(Do)”ではなく、どういう場をデザインしていくかという“在り方(Be)”が重要」(佐藤氏)なのだ。

好例として文京区の「こども宅食プロジェクト」がある(図2)。これは経済状況が食生活に影響するリスクがある家庭の子どもに対し、企業等から提供を受けた食品を配送する取り組み。ポイントは、この配送をきっかけに子どもとその家庭を必要な支援につなげ、地域や社会からの孤立を防いでいく「セーフティーネット」を構築するということだ。この事業では、文京区だけでなく、NPO団体、西濃運輸などの企業が対等な関係でパートナーシップを組み事業に取り組むコンソーシアム(共同体)方式を採用しており、西濃運輸は、仕組みを動かす肝である「物流」を担っている。また事業の原資として、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用しているのも特徴といえる。なお、平成30年6月現在の寄付金額は30,236,603円(259件) 。30年度は、600世帯を対象として行うことを予定しているという(文京区ホームページ「こども宅食プロジェクト」より)。

図2

図2

こうした「新たなパートナーシップ」を活かした取り組みは、社会問題を解決するだけではなく、企業活動自体にもメリットをもたらす。それは、様々なステークホルダーと協働することで、自社の力を超えた新たなイノベーションを産むことにつながるためだ。

佐藤氏は、受援力を活かし「より多くの異なる立場のステークホルダーと協働することが重要」と述べる。複雑化する問題を解決すること、そして新たなイノベーションにつながる可能性を秘めた「マルチステークホルダー・パートナーシップ」は、企業のSDGsへの取り組みには必要不可欠であると言える。

関連記事