Sustainable development goals

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持続可能な公共調達から考えるSDGs

SDGsの各目標は企業に新たなビジネスの機会をもたらす。なかでも「分野横断的なテーマ」で、より身近で幅広い関係者に関わりがあるのが、「持続可能な消費と生産(SCP:Sustainable Consumption and Production)」に着目したゴール12「つくる責任つかう責任」だ。

多くの人の行動変容が求められている

ゴール12の大きな特徴として、「ターゲット」の主語が多様であることが挙げられる。政府・自治体だけでなく、企業、一人ひとりの個人と幅広く、「あらゆる人たちの取り組みが期待されており、多くの人の行動変容が求められている」(一般財団法人CSOネットワーク 事務局長・理事 黒田かをり氏)のだ。企業活動に関しても、例えば、機関投資家の関心も高まっている「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく世界各国の動きを見てもサプライチェーン全体の課題になりつつあるのがわかる。この原則は、2011年に企業のビジネスと人権に関する基準と慣行を強化するために国連人権理事会で採択されたもので、各国に奨励されている国別行動計画策定だけでなくイギリス(「英国現代奴隷法」2015年見直し)、フランス(「人権デューデリジェンス法」2017年)等では法制化もされている。

市場の10~30%を占める公共調達 影響は大きい

このゴール12のなかで重要視されるのが「持続可能な公共調達(SPP:Sustainable Public Procurement)」。その理由は、公共調達が市場に占める割合の高さだ。「途上国では30%、先進国でも12~15%程度を占めている。つまりそれだけ社会的影響力がある」(黒田氏)。そのため、上記「ビジネスと人権に関する指導原則」のなかでも、公共調達は重要なテーマとなっている。

またEUでは「EU公共調達指令」(2014年採択、加盟国は原則2016年4月までに国内法に移行)で、調達プロセスに環境や社会への配慮の組み込みがなされ、調達におけるコストを購入価格だけでなく環境や社会も含めて評価するための新しい考え方「ライフサイクル・コスティング(LCC)」(図1)への言及もなされている。

ライフサイクル・コスティング(LCC)

図1 ライフサイクル・コスティング(LCC)

米国では自治体レベルで「スウェットショップ(劣悪な労働環境での生産を表す)」からの調達を排する地方公共団体の会員組織「スウェットフリー調達コンソーシアム」が立ち上がった(メイン州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州と14の市が参加)。

「総合評価型入札」を活用し持続可能性に寄与

国内の動向はどうだろう。公共調達の割合が16%と先進国の中でも高い(図2)の日本では、以前より「価格以外の観点」から公共調達が捉えられている。2000年に環境負荷低減に資する製品・サービスの調達の推進を目的に「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(通称「グリーン購入法」)が施行。また、入札制度では、1999年地方自治法施行令改正で「総合評価方式」が導入されており、技術的能力や災害協定・ボランティア活動による地域貢献実績など、価格以外のいくつかの要素を総合的に評価することが行われている。

日本の政府調達額

図2 日本の政府調達額

つまり、「日本の公共政策を研究している武藤博己氏の著書にもあるように、“総合評価型入札の枠組みのなかに、社会的価値を判断基準として組み込めば、入札制度そのものが、社会的価値を追求する政策手段となる”ことが期待できる」(黒田氏)のだ。

実際に、黒田氏らが日本の地方自治体における総合評価方式等に関する調査を行ったところ、そこで最も評価されるのは地域貢献だが、環境負荷削減への言及も高いこともわかったという。また、SDGsに関しても基本契約や計画等での明文化を検討していると回答する自治体もあり、公共調達に持続可能性を組み込む動きは、日本でも進んでいくことがうかがえるのだ(「公共調達・公契約条例と地域の持続可能性に関する全国自治体アンケート調査」実施:CSOネットワーク/質問票助言:北大路信郷 前明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授/助成:独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金)。

「調達コード」を東京オリンピックのレガシーに

そして、今、多くの企業に影響があると言えるのが「東京オリンピック・パラリンピック」に向けたもの。同大会の「持続可能性に配慮した運営計画:第二版」(2018年6月)では、SDGsへの貢献が明確化されており、この計画を実現するためのツールの一つとして、調達する物品やサービスに共通して適用する基準や運用方法で構成された「“持続可能性に配慮した調達コード”の策定・運用」が掲げられている。このコードは、今後の日本の公共調達に持続可能性を組み込む可能性を秘めており、黒田氏も「この取り組みをここで終わらせるのではなく、大会の“レガシー”として、長期的に政府・公共調達へと受け継ぐことが期待される」と述べる。

上記「ビジネスと人権に関する指導原則」に関しても、「国別行動計画」の作成に向け日本の企業活動の現状を確認するため関係省庁で連携しベースラインスタディ意見交換会が実施されるなどの動きが見られる。サプライチェーン全体、社会全体に関わるSDGsのゴール12。黒田氏は、これを実現するために「ビジネスと人権に関する指導原則の国別行動計画に公共調達を位置付けること、調達コードを今後の政府・公共調達へと受け継ぐことが重要」とし、「経済だけでなく、社会と環境を統合的に組み込むことで、持続可能性に寄与できる」(黒田氏)と今後の期待を示した。

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