「捨てる」と「使う」を繋ぎ、価値創造 産廃処理業のデザイン経営
中台澄之 ナカダイ常務取締役、モノファクトリー代表取締役
著者:矢島 進二(日本デザイン振興会)
企業が環境問題に取り組むことは、もはや常識だ。メルカリの上場に表れるように、リサイクルやリユースは一般化し、リペアやリファービッシュにも注目が集まっている。この状況下で、産業廃棄物において、新たなプラットフォームを構築しているのがナカダイだ。
自身の肩書を「ビジネス・アーティスト」と名乗る中台澄之氏は、群馬に本社を置く産業廃棄物処分業ナカダイの常務であり、ビジネスコンサルタントを行う子会社モノファクトリーの代表も務めている。産業廃棄物の徹底分別と中古リユース市場の創出により、リサイクル率100%を実現する社会構築を目論んでいる。
ナカダイは現在、一日で60トンの廃棄物を引き取り、年商は7億円。モノファクトリーは1億円で、連結売上高は8億円だが、これを5年後に15億円以上にする計画だ。ナカダイは処理の規模から8~9億円が上限で、モノファクトリーを7~8億円とし、中長期的にはコンサル業の比率を逆転させる予定だという。
「会社の規模を大きくするには、必然的に引き取る廃棄物の量を増やさないといけません。ですが、『廃棄物を減らす』という私の目標とは矛盾するのです。そのためビジネスのスキームや手法を変えないといけないと気づきました。廃棄物も建築やファッションと同じように、時代によって価値感が変わる可能性があるはずです。そこでデザインの力を使い、廃棄物を価値の高い『素材』に替えていくプロジェクトを始めました」と中台氏。
「入社した1999年当時は、廃棄物を分別し素材にすることを一生懸命やりました。しかし、それでは単なる『リサイクル』でしかないと気付いたのです。私がやりたいのは、リユースやリサイクル以外の廃棄物の使い方を創造し、捨て方をもデザインする『リマーケティングビジネス』の創出なのです」

Open Aと協働する「THROWBACK PROJECT」。 モノを蘇らせ、再び新しい製品に
新しいモノの使い方を創造する
筆者がナカダイと初めて遭遇したのは、2010年のデザインウィーク会場で、周囲とは異にするアプローチ法に興味を持った。その後、2011年2月に中台氏と初めてお話しし、筆者が関わるデザインハブで公開講座を開いた。
続いてナカダイは、廃棄物を素材としたプロダクト・アート作品を展示する「産廃サミット」を多摩美術大学で開始したほか(現在までに7回開催)、ワークショップを意欲的に実施。また2013年にはモノファクトリーを発足させてグッドデザイン賞でベスト100を受賞、さらに、品川ショールームの開設やメディア露出によって、社会的にも注目を集めていった。

モノファクトリー品川ショールーム

受け入れた廃棄物を分別し、マテリアルに転用
なぜ、デザインに着目したのか。「同業他社との比較でなく、廃棄物業自体が異業種よりも魅力あるものとして伝えられなければ、認められないと思ったからです。また共通言語のない人に対して、廃棄物処理を自分ごとに受けとってもらうために、事業の初期段階から見せ方や言葉を慎重に選んできました」と中台氏は話す。
この記事は、公開期限:2018年11月11日を過ぎたため、非公開になりました。
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